なんて可愛い




通勤中も、仕事中も、帰りもずっと気になってしょうがなかった
あの人見知りの激しい猫が人の家で半日近く過ごせるのか
片言の言葉で意思の疎通はできるのか、本当に心配で
だがそれも杞憂終わることとなる

「おかえりにゃさい」
「お・・・おう」

不二さんの家に引き取りに行くと真っ先に出迎えてくれたのはなんとアラシヤマだったのだ
すげー普通にしゃべれるようになったのか

「お疲れ様です!アラシヤマさん凄いんですよ、日常会話1日でマスターしちゃいました」
「はにゃし、したくてがんばった」
「そっか・・・偉いなアラシヤマ」

頭を撫でてやるとアラシヤマは見たこともないくらい嬉しそうに微笑んだ
心臓が派手に音を立てたけど気付かないふりをする
これは・・・なんだ?

「今日1日ありがとうございました菊丸さん」
「いえ、俺凄く楽しかったです!同族だから、力になりたいっていうのもあったし」

えへへ、と菊丸は複雑そうに笑う
菊丸も猫らか人へと変わったヒューマンシンドローム感染者だと不二が教えてくれた
こうしていると何ら人間と変わらないが今日もかぶっているフードの下には猫の耳が
服の下にはしっぽがあるのだろう
アラシヤマは綺麗に消えたが菊丸はどちらも消えなかったらしい
こういうのも個人差があるのだろうか?

「じゃあ、この辺で失礼します。不二さんにもよろしくお伝えください」
「はい!アラシヤマさん今日はありがとうございました」
「またことばおしえてください」

ぺこりとお辞儀までできるようになったアラシヤマの成長ぶりに嬉しいような、寂しいような感じがする
何となく無言のままエレベーターに乗り家へと歩みを進めた

「明日から昼間は俺の兄弟んとこで言葉の勉強ナ」
「またしごと?」
「あぁ。でも時間作って会いに行くから」
「ほんと?ことばおぼえるのはたのしいけど、しんたろーさん、いにゃいから・・・つまんにゃい」

スーツの裾をぎゅっと握りしめてアラシヤマは俯いてしまう。
それも可愛いけど何より俺が嬉しかったのが

「い、今・・・俺の名前」
「ごしゅじんさま、のほうが・・・いい?」

首をかしげているアラシヤマを俺はいつの間にかぎゅっと抱きしめていた






++++++++後書き++++++++
久しぶりに進みます
1日1話続きます

ご主人様もいいけど名前を呼んで貰えたことが嬉しかったよシンちゃん
メロメロになりそう
一生懸命話すアラ
でもまだまだ流暢というわけにはいかないようです

次回予告(のようなもの)
言葉を教えてくれるのは誰?
シンタローの異母兄弟登場




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