気の迷い?なんて信じない!




最近猫を飼い始めました
や、ただの猫だったら別にいいんだよ
じゃれつかれたり、甘噛みされたり、舐められたりしても全く気にしないだろう
でも俺の飼っている猫はアメリカンショートヘアーでも、マンチカンでもない
ヒューマンシンドロームという奇病に感染し、人になってしまった野良猫だ
飼うきっかけはもう成り行きとしか言いようがない
アイツを放っておけなかったから、と言うのが一番それらしい理由だった

「アラシヤマちょっと手伝え・・・・って」

晩飯の用意をしているとアラシヤマはソファーに座りながらうたた寝をしていた
側によって頭を撫でても全く起きない

(そりゃそうかもナ・・・)

今日は俺が休みだと言うこともあり歩く練習もかねて外へ出かけた
生活必需品とか一人分しかなかったし、いつまでも俺のシャツを着せておく訳にもいかない
好きなものを選べと言ったのだが今着ている物で十分だと返された
服を持っていなかったアラシヤマは俺の持っている服を適当に着ている
今日も今日とてロンTシャツにスラックスというラフな格好
さすがにその格好で会社に連れて行くわけにもいかないから
遠慮からかいらないと言い張るアラシヤマを何とか宥め賺しスーツを買ってやった
申し訳なさそうに身を縮めていたアラシヤマの頭を撫で、飼い主なんだから当たり前だろ?と言うと
少しだけ寂しそうな表情を浮かべながら笑ったんだ
人見知りが激しいこいつは外を歩くだけでもビクビクしていて
その様子を見ているとこれから人としてちゃんと生きていけるのか心配になる
元に戻る方法は未だ見つかっていない。不可能と言っても過言ではないだろう
こいつはまだまだ覚えることがたくさんあるから、一人で立てるようになるまで
俺がしっかり面倒みてやんねーとナ

「アラシヤマ、寝るならベッド行けって。おい」
「ん・・・」

ペチペチと頬を叩くがやはり目覚めなかった
人の姿で初めて外の世界を歩いたのだ、緊張の連続で相当疲れたのだろう

「ったく・・・アーラーシーヤーマー!!!」
「ふにゃ!?」

耳に直接大声を吹き込んでやるとようやくびくりと身体を揺らして目を覚ました
でもまた夢と現実を行ったり来たりしているのか目の焦点が定まっていない
「ほら手貸してやるから歩け。さすがに今のオマエを担げる気がしねー」
体重を量ったことはないが俺と同じ身長をしているのだからそこそこあるだろう
力の抜けた手を引っ張り上げた・・・はずなのだが
寝ぼけているアラシヤマが上手くバランスを取れるはずもなくソファーへと身体を沈めた
それに引きずられるようにして俺もアラシヤマを潰すような形で倒れ込む
なぜか異様に顔が近い。それに唇に柔らかな物が触れているような気もする

「ぅ・・・んんっ」
「・・・・っ!?」

苦しそうなアラシヤマの声がして俺の思考は一時停止した

Q.イマオレハナニヲヤッテイル?
A.キス
Q.誰に?
A.アラシヤマに!?

慌てて離れようとしたのだがアラシヤマが誘うようにチロリと唇を舐め上げてきて
何かが暴れ出しそうになる
待て、俺は男だ。コイツも男だ。
猫の時の性別は知らないが人になってからの性別は知っている
コイツが人になってしまった日の夜、服を着せてやったのは俺だからだ
間違いなく俺と同じモノがついていた
言っておくが俺にソッチの趣味はない。もちろん女が好きに決まっている
男とこういうことができるかと問われればもちろんNOだ
考えただけで鳥肌が立つ
なのになぜか俺は合わせた唇を離せずさらに口づけを深くしていった

「んっんっ・・・」
「はっ・・・アラシヤマ・・・」

息継ぎのため唇を放したついでに吐息で口を開けろと言ってみる
さすがに嫌がるか、と思ったが予想に反してアラシヤマは躊躇いを見せず口を開けた
コイツは今ちゃんと目を覚ましているのだろうか?
寝ぼけているなら何となく分かる、だがもし意識があってココまでしているならば・・・?
まだ人になって日が浅いとはいえコレはおかしい
コイツにとって同性とのキスは不自然なことではないとでも言うのだろうか
それはそれでムカツク
差し出された舌を遠慮無く絡め取り、唾液を送り込めばアラシヤマはこくりと喉を鳴らし嚥下する
あり得ない、おかしいと思いつつ俺はキスの心地よさに溺れていった
猫の舌はざらついている、と何かの本で読んだがコイツは人のそれと同じ
柔らかくてとても熱い
軽くかみついてやるとピクリと肩を揺らし吐息を漏らす
ヤバイくらいに気持ちいい
今まで幾人もの女とキスをしてきた
けど正直キスだけでココまで気持ちいいのは初めてのことだった

「はっ・・・んく・・・・ぁ・・・・ご・・・しゅじんさま?」
「っ!?」

息苦しさでようやく意識がはっきりしてきたのか猫が小さく名前を呼ぶ
その声で我に返った俺は慌てて身を起こし、不思議そうに首を傾げるアラシヤマをおいて
トイレに駆け込んだ

(危なかった!!)

なにが・・・と聞かれても困るが、とにかく危なかった
もしあの時「ご主人様」と声をかけられていなかったらあのまま行為を続行していた気がする
いや、気だけでは済まない。続行していた自信がある
間違いなく俺はあの柔らかな唇に欲情し、欲求を抑えきれず本能のまま貪ったのだ
やめるチャンスはいくらでもあったはずなのに、俺はやめなかった
ただやめたくないと心のどこかで思っていたのも事実
こんなの気の迷いでやっていいことじゃない
飼い猫とキスなら普通かもしれないが、あいつは今人だ
飼い主として、アイツを支えなければならない立場として、最低のことをした

(・・・最悪じゃん・・・・俺)

目を閉じると呼気を乱し頬を染めていた顔が浮かんできてさらなる自己嫌悪に苛まれる
アラシヤマに合わせる顔が無くて俺はしばらくトイレから出られなかった






++++++++後書き++++++++
ちょっと一息進みます
ふんどし締め直して続きます

【なんて恥ずかしい】で初めてのちゅーとか書きましたが
日曜日にされていましたーという

この時アラに意識はありませんでした
よかったような、残念なような・・・?

短いですが1万5千Hit御礼表シンアラ小説となります
楽しんでいただけたら幸いです^^




本編に戻ります??                               Novels