なんて空しい
彼の兄弟に会えたのは次の週のことだった
日曜日という仕事が休みの日に買ってもらったスーツを着て革靴を履いて
いつもはラフな格好をしているからどうも慣れないし、我ながら似合っていないと思う
散々いらないと抵抗したのに優しいご主人様は飼い主だから当然だろ?と満面の笑みを浮かべ
買い与えてくれたのだ
とても嬉しかった。でもなぜか同じくらい悲しかった
彼がこんなにも優しいのは人になってしまった哀れな野良猫に対する同情では?
もしあの姿・・・猫のままだとしたら彼は振り向いてもくれないのでは?
と言う暗く重苦しい何かがわき上がり喜びを塗りつぶしてしまう
元の姿に戻りたいという気持ちは今でも失われてはいないが・・・
元に戻ってしまっても、彼は変わらず自分を傍らに置いてくれるだろうか
邪魔だと冷たくあしらわれ捨てられたら、と思うと怖くてたまらない
そんなことになるくらいなら、戻らなくてもいいとさえ思ってしまうのだ
「アラシヤマ、着いたぞ」
「え・・・・わっ!?」
ボーッとしていて気がつかなかったが目の前には大きな扉がそびえ立っていた
ここが彼の働く会社の研究所なのだろうか?1つの工場並の大きさだ
「オマエのことはココの所長に話してあるから。つっても腹違いの弟だけどナ」
インターフォンを押すとすぐに応答があり扉が開いた
何の臆面もなく彼は足を踏み入れてしまうが、こちらとしては説明もなくこんな場所に連れてこられてしまい混乱しっぱなしだ
はぐれてしまわないように慌てて彼の後に付いていくと長い廊下の奥から
カツカツと革靴が廊下を踏む音が響いてきた
全速力で走っているのかだいぶ歩幅が短い
「シンちゃーん!!」
「グンマ走るとこ・・・」
「うわっ!!」
転ぶぞ、と彼が言う前に人間はベチッという音を立てて派手に転んだ
このタイプの床で転んだことはないが、かなり痛そうだ
「いったぁ・・・お、おはようシンちゃん」
「はよ、とにかく起きろ」
彼の手を借りて起き上がった『ぐんま』と言う人間は金糸の髪を揺らして起き上がる
「ありがと、シンちゃん。君が『あらしやま』だね?」
ふんわりと微笑みを浮かべる瞳はアクアマリンのように透き通った青色をしていた
従兄弟と言っていたが彼とは全く違う容姿に戸惑いを覚えてしまう
「ボクはグンマ。この研究所の所長を務めています」
++++++++後書き++++++++
遅れました進みます
大遅刻続きます
グンちゃん登場
今後HSを解明するのに協力してくれるかも?
アラは悩み始めてます
次回予告(のなり損ない)
シンちゃんお昼休み
アラの様子が気になって見に来ちゃいました