シンデレラF

「行ってないッス」

「まぁ試してみよう。ここで最後だから」

河村は越前の前に靴を置きました。

「履いてごらん、越前」

「はぁ・・・」

不二に言われ越前は深い溜息をついて靴に脚を入れると簡単に入ってしまいました。

越前がポケットからもう片方の靴を出したとき皆驚きましたが、手塚は相変わらず眉間にしわを寄せているだ

けでした。

「決まりだね。海堂、お連れして」

「はい」

海堂が越前に近づくと

「・・・・ヤダね」

「あぁ?」

「俺はここがいい」

そう言うと越前は後ずさりました。

「しょうがねぇ」

「うわっ!」

近づくと逃げてしまう越前に何を言っても無駄だと気づいた海堂は、越前を担ぎ上げました。

「にゃろう」

「ぐっ・・・おわっ!」

越前は海堂の腹に膝を入れ、怯んだ隙に手塚が脚をかけました。

「逃げるぞ」

は!?」

理解し切れていない越前の手を引くと、手塚は家を飛び出していきました。




2人が出て行った後不二はクスクスと可笑しそうに笑い出しました。

「こうなると思ったよ。」

不二は手塚達とこの家に来てから2人ともお互いを気にしていることが分かっていました。

「海堂!海堂!」

気絶するほど頭を強く打ったらしく倒された兵士はまだ起きあがりません。

「ふーん、その人海堂って言うんだ」

不二は海堂をじっくり見ていいことを思いついたらしくもう1人の兵士に提案します。

「ねぇ、兵士さん 連れて行くはずの娘を逃がしてしまった代わりに作ることを協力するよ。」

「作る?」

河村の質問にただ微笑みだけを返すと2階に向かって呼びかけました。

「英二、ガラスの靴もう1足作れる?」

すると2階から小さな声で

「つ・・・くれにゃいことはないけど・・・今は無理・・・」

と返ってきました。

不二は少し困った顔をすると

「お願い、英二」

と言います。

「だからお前のせいで立てないんだっつの!!」

少し怒ったような声が返ってくると不二は笑みを濃くして

「僕のせい?そんなわけないでしょ?泣いて喜んで「分かった!!」

バタンとドアが勢いよく閉まる音がすると静かになりました。

「誰か居るんすか・・・?」

桃には声に心当たりがあるらしく恐る恐る聞いてきます。

「魔法使いの菊丸英二。僕の恋人だよ」

「い・・・いつのいまに!?」

「昨日の夜、君たちが舞踏会に行っている間にね」

桃はがっくりとうなだれてしまいました。

そんな桃を見た不二はフフ・・・と勝ち誇ったように笑います。

どうやら桃も英二に会ったことがあるらしくねらっていたのは明確でした。


しばらくすると英二がシーツをかぶって降りてきました。

「なんて格好してるの」

桃は顔を真っ赤にしています。

「しょうがないだろ!服・・・なかったんだから」

英二も赤面すると黙ってしまいました。

「とりあえずお願いね」

「ほいほい・・・」

英二が海堂の靴に向かって杖を一振りすると軍人用の革靴が越前が履いていた様なガラスの靴に変わりました。

「これでいいんだろ?」

「うん、ありがとう」

不二は英二の頭を撫でると桃の部屋に行きドレスを持ってきました。

「2人の体格も似ていることだし、これを着せていけばいいんじゃないかな?」

「それ俺のじゃねーッスか!!何でこんな奴に、納得いかねーないかねーよ!」

「今は緊急事態だからね桃も一緒に行ってみるといいよ、兵士に1人空きが出来るはずだから」

不二に言われるがまま海堂にドレスを着せると河村と桃はお城に向かいました。




2人だけのこの空間で
君を精一杯
愛したい





Next