なんてモヤモヤ 11
いや、誰だって驚くだろ
一緒に帰るはずの愛しの弟は先に帰ったと教えられて、迎えに来るはずの飼い猫がいつもの場所にいない
何かあったのかと思って急いで家に帰ってみれば弟と猫の熱いキスシーンときた
「なにやってんだ、オマエら」
思わずそう聞いてしまった俺は絶対に間違ってない
「あ、お帰りなさい。おにーちゃん!」
キスのことなど無かったかのようにいつも通りの愛らしい笑顔を浮かべるコタローの隣には
世界の終わりを見たような顔で絶句しているアラシヤマがいた
気付けば帽子がアイツの頭の上ではなく足下に落ちている
「あー・・・・」
だいたい察しが付いた。帽子を取らない理由を聞かれたが上手く答えられず帽子を取られて・・・・
まぁそんなところだろう
しかし困ったことになったものだ。「素敵」だの「可愛くて魅力的」だの言ってたからまさかとは思ったが
ここまで手が早いとは思っていなかった。や、分からんでも無いけどな。
『欲しいものはどんな手段を用いても全力で手に入れる』っていう青野家の家系的に考えると
弟の恋愛に口出ししたくはないが、相手が相手だ。ここはなんとしてでも引き下がってもらうしか無い
「ったく、猫耳の刑にこりずまた浮気とは・・・いい度胸だナ。アラシヤマ」
「う・・・わきってどういうこと!?」
コタローが慌てて猫に視線をやるがあいつは目を見開いただけでなにも答えなかった。
まだキスの衝撃が抜けきらず答えられなかっただけかもしれないが
「どうもこうも、そいつは俺と付き合ってんだよ。にもかかわらずこの間他人に色目つかいやがったからそのおしおき」
つかつかと固まったままのアラシヤマに近づき耳を引っ張る
「いたたたたッツ!なにしはるんどすか!?」
もちろん本物だから引っ張られれば痛いだろう。面倒なこと引き起こしたお仕置きも兼ねてるから
全く気にせず続けた
「こうやって引っ張っても絶対に取れないように細工してあっから帽子かぶってたって訳だ」
言い終わってから即、後悔した。いくら何でも無理がありすぎる言い訳だ
お仕置きとして猫耳で生活しろとか恋人同士でも普通言わないだろ。なにその変態プレイ
嘘だとばれたら絶対に嫌われる・・・・そしたら俺生きていけるんだろうか・・・・・
そんな心配をよそにコタローはとても明るい声を出した
「あーあ!もちょっと早くこっちに遊びに来るんだったなぁ。そうすれば僕にもチャンスあったのに」
(納得しちゃったよ!!!)
いいのか!?こっちとしてはその方が確かに助かるけど、でもそれでいいのか!?
いろんな意味で頭を抱えたくなった俺だった