なんてモヤモヤ 12




お邪魔虫にはなりたくないから帰るね!と言い驚く程あっさりコタローは身を退いてくれた
しかし諦めてはくれないようで別れ際にまた遊びに来ると高らかに宣言していたが・・・
本当にすぐ来そうで怖い

まぁコタローの方はグンマと要相談と言うことで・・・・問題は俺たちだ
駅まで送り届け家に戻ってくるまでかなり時間があったが、結局何の話もできなかった
どうしてあんなことになっていたのか、問えば我が家の猫は素直に答えるだろう
実際にその現場を見ていたわけではないが先に手を出したのはコタローだろうし
コタローの発言を本気にしていなかった俺にも責任はある
例えどんな答えが返ってきても責める気はない、むしろ謝らなければ行けないのは俺の方だ
なのに・・・何なんだろうナ。キスをしていた時のアイツの顔が瞼の裏に焼き付いて離れない
最近ずっと感じていたモヤモヤがさらに酷くなった気さえする

『どうもこうも、そいつは俺と付き合ってんだよ』

飼い猫を助けるためについた嘘なのに何で俺が衝撃を受けているんだろう?
俺にソッチの趣味はない。それは間違いないのにあの日触れた唇にもう一度触れたいなんて・・・

「あの・・・」
「・・・・ん?どした」

後数歩で部屋に付くと言うところで突然話しかけられた
考えを見透かされたのかと思い少しだけ焦る

「耳のこと・・・すんまへんどした。わてが油断したさかい、シンタローはんにも迷惑かけて」

アイツは申し訳なさそうに頭を下げた。きっと帽子の中に隠している耳も頭に付くくらい伏せられているのだろう

「オマエが謝るようなことじゃねーよ。それよりオマエどうすんだ、これから」

コタローの想いを受け入れると言うなら俺は止めない
飼い主としての責任を放棄する気はないができる限りコイツの意見を尊重してやりたかった

「コタローはんかて冗談で言うただけやと思うし・・・」
「冗談じゃねぇから困ってんだけどナ」

冗談だったらどれほどよかったか。俺もここまで思い悩む必要もなかったわけだし
数秒の間がありアラシヤマが顔を上げる。どうやら決まったようだ

「迷惑やないんやったら・・・わては・・・・・シンタローはんと・・・一緒が・・・・ええどす」

顔には出さなかったがその答えに心底ほっとした。今更他の誰かに譲るなんて絶対にできない
男だとか、元猫だとか色々と問題はあるけれど気にするのはやめだ
あのキスではっきりと自覚した
どうやら俺は不思議な黒猫に心底惚れてしまったらしい

「迷惑じゃねーからここに居ろ」
相変わらずの言動に苦笑しながら頭を撫でてやる

後でマーキングと称し、もう一度あの唇に触れてみようか






To be......