なんてモヤモヤ 4




コタローのキャリーバッグを持ちながら(あんな重いモノを可愛い弟に持たせられるかっ)
改札を抜けると何時もの場所にアラシヤマが立っていた
どれだけ遠目で見ても、人に囲まれていても、存在感というか纏う空気が違うから自然と目が行く
そして側を通る人に限らず多くの人もチラチラとアイツに視線を送っていた

「ねぇあの人かっこよくない?」
「うん。身長も高いし、すっごく綺麗だし!!モデルさんかなにか?こんなところで何してるんだろー」
「恋人待ってるとか?」
「それはヤダ!でもあの人毎日いるよね」
「私も見たことある!ね、声かけてみない?」
「それって逆ナンじゃん?アンタ勇気あんねー」

学校帰りの高校生がきゃあきゃあと黄色い声を上げておしゃべりしている内容が意図せずとも
耳に入ってくる
えーと、そいつが待っているのは恋人じゃなくて飼い主の俺です。そして職業はモデルじゃなくて主夫
なんて言えるわけ無い
ふと気付くと、あまり良くなさそうな輩までもがアラシヤマの方を見てニヤニヤと下卑な笑みを浮かべている。
まさかとは思うが女と見間違ってるわけじゃねーよな?
投げかけられる様々な視線が突き刺さるのか物憂げに床を見つめる横顔は毎日のように
顔を見ている俺でさえ見とれてしまうくらい綺麗で・・・・・

「おにーちゃん!」
「うおあ!?」

突然声をかけられて俺らしくもなく大声を上げた

「びっくりしたぁ!どうしたの?ぼーっとしちゃってさ」
「や、なんでも・・・ない。アラシヤマ!」

治まらない動悸を隠して声をかけると、沈んでいた表情を一変させ柔らかな笑顔でこちらへと駆け寄ってくる

「お帰りなさい」
「ただいま。紹介するよ、俺の超絶可愛い弟のコタローだ。今晩泊まらせることにした」
「ハジメマシテ・・・だよね。ボク青野小太郎。コタローでいいよ」
「初めまして、わてはえーと・・・加野嵐山、どす」

しどろもどろになっているのが見て取れたから、急いで助け船を出す
大騒ぎになるからコイツの正体は決して漏らさないというのが発見者である不二との約束だ

「母の親戚の子供なんだ。こっちの学校に行くってんで居候させてる」
「そうなんだ、ボク全然知らなかった!よろしくね、素敵なおにーさん」
「へ?へぇ・・よろしゅう」

何が素敵なんだと問う前にコタローはアラシヤマの手をがっしりと握りしめていた






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