なんて重傷
まだ手伝うと言い張るアラシヤマさんを何とか客間へ押しやった
繰り返し謝るアラシヤマさんの顔色はよくない
精神的にも肉体的にも疲れているようだ
「にゃんかあったのかにゃ・・・・」
不二が入れてくれたアイスティーをちびちび飲みながら小さく呟く
「心配だけど今はそっとしておこう。聞かれたくないこともあるだろうし」
「そう、だね・・・・」
もし聞かれたくないことだったら余計に傷つけてしまう可能性だってある
心配だし、協力したいけど、聞かない優しさも必要なんだって不二は言ってた
不二も聞きたいのは山々なんだろうけど傷つけないように気を遣っているんだ
「あ、そういえば、お帰りのキスまだだよね」
「はぁ!?」
今までの真剣な雰囲気はどこへやら、見とれるような笑顔でキスを迫る不二にあっけにとられた
「帰ってからもう何時間もたってんじゃん。それにアラシヤマさんがいるから今日はそういうのにゃし」
ぷいっと顔を逸らすと不二がいきなりソファーから立ち上がりよろよろ数歩後退ったかと思えば
床に手を付いてメソメソ泣き出した
はぁ〜また出たよ・・・不二は自分の希望が叶わない時によくこうやって同情を誘おうとする
ふふん、でもキクマル様はなんでもお見通し。嘘泣きだっていうことはバレバレ
「不二、そんな風にいじけたって俺は絶対に嫌だかんにゃ」
「いいじゃない少しくらい。英二のケチ」
ケ、ケチだとぉ!と、安い挑発に乗ってしまったのが俺の運の尽きだった
頭を小突くために振り下ろした手は見事に躱され、バランスを崩した俺は不二に支えられて
ようやく立っていられるような状態
まさに彼の思うつぼである
「なんだ、抱きしめて欲しかったの?それならそうと早く言えばいいのに」
英二も意地っ張りだなぁ、なんてウキウキされながら抱きしめらたって全然嬉しくない
って訳でもない
これって文字にすると絶対「惚れた弱み」って奴なんだろうな
「ね、えーじ」
「にゃに・・・」
不二の甘い声と雰囲気に流されないように強ばった声で返事をする
でも彼はそれをあざ笑うかのように俺が一番弱い言葉を口にした
「だいすき。誰よりも何よりも英二が一番、だよ」
歯が浮くような台詞と共にぎゅっと強く抱きしめられる
ただそれだけなのにバクバクと心臓はあり得ない程大きな音を立てた
(俺って・・・結構重傷かも)