なんて臆病 7




他に行き場のないアイツが逃げ込むとしたら100%管理人である不二さんのところだろう
ったくどこまでも手のかかる猫だ
確かにいきなり彼女を連れてきた俺も悪い。でも出て行くことはねーだろ
彼女(もう元、か)は『気を利かせてくれた』とか言っていたがアイツがそんな器用なことできるわけ無い
たぶん勢いだ
あまりの身勝手さに多少なりとも苛ついたがやっぱり放っておく事はできない
ケータイの電話帳から逃げ込んでいるであろう家主の名前を探しボタンを押す

『もしもし不二です』
「こんばんは、青野です」
『こんばんは青野さん。どうかしましたか?』
「家の猫がそこに逃げてないかな、と思いまして」
『あぁアラシヤマさんですね。いらっしゃってますよ』

やっぱり・・・
はぁと重たいため息が出る

「ご迷惑をおかけしてすみません。今迎えに行きますんで、捕まえておいてください」
『分かりました、と言いたいところですが、ちょっと今日は無理じゃないですかね』
「は?え、どうしてですか?」
『帰りたくない、だそうです』

勝手に出て行ったあげくこっちは心配してやってんのに『帰りたくない』だ!?
キレた俺はあくまでも冷静にアラシヤマを電話口に呼び出そうとしたのだが不二にのらりくらりと躱され
挙げ句の果てに外泊を許可することになってしまった
ただの外泊なら迷惑をかけるからで済むのだが『体調を崩しているようだし一晩様子を見たい』と
言われれば医者には逆らえない
ヒューマンシンドロームに感染したアラシヤマは普通の医者に連れて行くことはできないため
発見者である彼に診てもらうしかないのだ
年下とは言え侮り難し不二周助
とっくに通話の切れていたケータイをテーブルの上に置いてソファーに横になる
久しぶりに何の音もしない家の中
家に帰ってくれば必ずアイツが笑顔でお帰りと言ってくれた
話すのが得意ではないと言っていたがアイツとの会話はとても心地よくて
他愛もないことで会話が弾んだこともある
何かが欠落してしまったこの部屋はとても居心地が悪い
親父の元を離れたくて始めた一人暮らしは快適だったはずなのに
寂しい、なんて思ったこともないのに

「こんなことなら別れるんじゃなかったかナ」

そんな負け惜しみじみた言葉すら空しく響いた





++++++++後書き++++++++
軽やかに進みます
軽快に続くといいよね(ぇ

結局お迎えに行けませんでしたー

不二VSシンは不二の圧勝だったようです
口では不二には勝てないと思うんだ!!(はぁはぁ
言い負かされてるシンちゃん萌え(複雑な萌え方

(のーんびり)次回予告
その頃不二家では・・・

アラは晩ご飯の後片付け
英二は客間に布団準備してました




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