なんて臆病 5
お帰りなさいと笑顔で迎え、行ってらっしゃいと同じ笑顔で送り出す
そんな穏やかな日々はもう限界かもしれない
あの人が側に来たり、通り過ぎたりする度に知らない匂いが鼻をつく
香水の匂い、違うシャンプーの匂い、女の・・・匂い
人になってもなお聴覚や嗅覚は衰えてくれなかったらしく、不必要な情報まで明確に伝えてくる
知りたくないのに、気付きたくないのに
目を逸らすなと言われているようで、とても辛い
こんな事ならば・・・人になどならなければ良かった
「じゃあ行ってくる。今日も遅くなるだろうから先に寝てろ」
「へぇ・・・・行って、らっしゃい・・・・気ぃつけて」
がちゃんと重い扉が閉まりほっと息を吐き出す。少し訝しんではいたがばれてはいないようだ。たぶん
実を言うと昨日から体調がおかしい。何となく熱っぽいというか、節々が痛いというか
体温計で熱を測ってみたところ37.6度という何とも微妙な温度だった
体調が悪い、気分も悪い、その上あの人の帰りが今日も遅いとなってくるとやる気が全て消えていく
こうなったら1日家事を休んで様子を見た方がいいかもしれない
家事を引き受けると申し出た時に買ってもらったエプロンを外して寝室に向かう
ベッドに横になると身体の力が抜けすぐに眠りに落ちていった
「・・・い、アラシヤマ。大丈夫か?」
「シンタロー・・・はん?え、なして・・・?」
目をこすっても消えないと言うことは夢ではない。どうしたのだろう?
今日は遅くなると言っていたのに
「わりぃナ。あいつがいきなり家行きたいとか言い始めて・・・」
「シンタロー、誰と話してるの?」
忘れもしないその声。今一番聞きたくなかった女の・・・
遠慮無しに寝室に上がり込んできた女はこちらを見ると不思議そうに首を傾げる
あぁこういうのを修羅場と言うんだっけ?
「え、誰?」
「あー俺の親戚だよ。こっちの学校に通うんで居候してるんだ。名前は・・・・・かの、加野嵐山」
「へー・・・・結構かっこいいじゃん。初めまして、お姉さんは」
「ええどす」
あの人に聞きたいことも、彼女に言いたいことも色々ある
だが今この空間にいることは耐えられなかった
「すんまへん。わて出かけてきますわ」
「お、おいアラシヤマ!」
後ろから聞こえるあの人の声を振り払うように玄関の扉を閉める
もう・・・・・ダメかもしれない
++++++++後書き++++++++
遅れましたが進みます
やる気元気続きます
彼女来ちゃいました
アラはなんだか具合が悪かったのに
思わず飛び出して来ちゃいました
我慢の限界
(たまには普通に)次回予告
行く当てもなく彷徨います
ふらふらふら〜