なんて懐かしい




彼がヒューマンシンドロームに感染したのはちょうど動物病院で働き出した頃のこと
慣れない仕事で疲れが溜まっていたせいか僕はエージの異変に気付いてあげられなかった
そして翌朝目を覚ますと猫の耳としっぽをつけた人間が寝ていたのだ
正直夢かとも思ったが紛れもない現実だった
見捨ててしまうのは簡単だけどエージはかけがえのない存在だから
僕は自分の知り得る全てを教えた
言葉や5教科は時間が掛かったが、料理や家事の方はすぐに覚えて翌日から手伝ってくれたものだ
そして2年たった今、英二は人として生活していけるまでに成長した
大変だったかと言われればそれはもう想像を絶するほどだったがそれ以上に喜びの方が大きい
英二が初めて僕の名前を呼んでくれた時の嬉しさはきっと子供が言葉を初めて話した時と同一だろう

「不二ーお風呂沸いたよ−」
「僕はまだ片付けが残ってるから、英二が先に入っておいで」
「え?いいよおいといて!俺が後で洗うし」
「家事は分担って言う約束でしょ?それとも一緒に入る?」
「っ!!!いい!」

にっこりと微笑んでやると脱衣所から顔を覗かせていた英二の頬が一瞬にして朱に染まる
そう言えば英二はいつから僕を名字で呼ぶようになったのだろうか?
言葉を覚え始めた頃は拙い口調で『しゅうすけ』と呼んでくれたのに
今では『不二』としか呼んでくれなくなった
別にそのことに対して不満があるわけではないのだがちょっとだけ不思議に思う
目を閉じるとすぐに思い出せる
今も十分すぎるほど英二は可愛いが、昔は舌っ足らずの口調も相まって半端なく可愛かった
どうしよう今すぐ英二を抱きしめたい・・・
抗いがたい欲求に負けて脱衣場へと向かう。もちろん片付けは終わらせた。

「うわっ!ちょ不二!?にゃにやってんの!?」
「僕も一緒に入ろうかと思って。そういえば英二、どうして僕の名前呼んでくれないの?」
「は?不二っていやにゃの??」
「昔はあんなに可愛く『しゅうすけ』って呼んでくれたのに今はちっとも呼んでくれないから」

必死に僕を追い出そうとする手を絡ませ、ついでに腰に手を回して身体を引き寄せれば
あっという間にキスできそうなくらいまで顔が近づく

「ね、英二」
「・・・・っかしい」
「え?」
「恥ずかしいの!いいじゃん不二で」
「じゃあ、ますます名前で呼んで欲しいかな」

鬼!とか悪魔!!とか文句を言っている唇を塞ぐ。さてどうやって名前を呼ばせようか?







++++++++後書き++++++++
消滅しちゃいましたww
ダメだ思い出せない








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