なんて嬉し・・・い?




彼に抱きしめられてから数分後、ようやく落ち着いて周りの様子を観察できるようになる
ここは毎日のように通っていた彼の家で、今いるのは彼の寝室
自分がどうして人の姿になってしまったのかも、彼がゆっくりと詳しく説明してくれたおかげで
朧気ながらも理解できた

「で、オマエはここで暮らすってことになったんだけど。それでいいか?」
「いい」

異論もなかったので首を縦に振る
他に行く当てなどないし、この姿にも慣れていないのだから外に出る方が怖い

「じゃあオマエ名前は?」
「にゃい」
「あー・・・ない?なんだよないって母猫いただろ」
「おいていった」

母猫はとうの昔に他の兄弟たちとこの場所を離れている
自分は生きていくための力がないと判断されておいて行かれたのだ
恨んではいない。憎んでもいない。それが生きていくために必要なことなのだから

「そっか・・・悪かったナ。嫌なこと聞いて」
「きめて」
「俺が?!責任重大じゃねーかよ・・・」

彼は頭を抱えて考え込んでしまった。別に名前など何でもいいのに
自分の寿命が猫の時と変わっていないならば、そう長く一緒にいられない

「嵐山。とかどうだ?」
「あ・・・ら?」
「アラシヤマ。京都ってところにあるすっげー綺麗な山の名前なんだ」

いい名前だろ?と自信満々に言われたらなんだかそう思えてきてしまう
アラシヤマ・・・京都にある美しい山の名前。なんだか自分にはもったいない気がした

「俺は青野真太郎、シンタローでいいから。よろしくナ、アラシヤマ」
「よろしく」

端から見ればとても滑稽な場面だろう。だが自分たちにとっては大きな一歩となった
まだ拙いもののこうして自分の思いを相手に伝えられるのだから
不謹慎だとは思いつつ幸せだと思ってしまう

「やっべ会社!!支度するからちょっとそこで待ってろ。あ、その服はやる」

バタバタと慌ただしく彼は寝室を出て行ってしまった。
その服・・・?言われてからようやく気がつく
いつ着せてくれたのだろうか、自分が身に纏っているのは間違いなく彼が昨日着ていたシャツだ

「におい・・・あのひとの」

彼の匂いが自分を包んでいて、なんだか落ち着かない気分になった






++++++++後書き++++++++
毎日何とか進みます
目指せ毎日続きます

ようやくアラの出番だよ
あーちゃん名前をもらいました
シンちゃんようやく自己紹介
主要カプかこんなに名前出てこないって・・・orz
何よりシャツの描写が少なくて残念

次回予告(仮)
仕事があるシンに変わりアラの面倒を見てくれるのは?
同族だけど何かが違う
次もアラのターンかな・・・?




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