なんて悲しい




知らない人間のにおいがする
熱でぼんやりとした頭でここがどこか考えても答えは全く浮かんでこない
体中がきしむように痛み目も開けない状態だった


あの部屋に近づかなくなって一週間
重たい気分の中目を覚ますと、視界が揺らいだ
今までそんなことなかったからすぐにまずいと気づいたけどもう遅い
ふらふらとおぼつかない足取りでさまよい歩きながら
このまま死ぬのかな・・・・・なんて考える
元々親に見捨てられた自分だ。今まで生きてこれたのも単に運がよかっただけ
独りで生きてきたから、死ぬときも独りでいい
そう思っていたのに気がつけばあの人間の部屋に来ていた
そこから自分が、彼が、どのようなことを言ったか覚えていない
時が進むにつれて身体のきしみが強くなっていく
意識を飛ばしかけた瞬間

「大丈夫だ。俺がずっと側にいる」

なんて言葉が耳に届いた
嬉しくて、でも同じくらいに悲しくて
だって自分は人ではない。そして彼は猫ではない。
いくら自分が人の言葉を理解できても、彼には猫の言葉が分からない
『ありがとう』そう言っても、彼には自分がか細く鳴いたとしか伝わらないのだ


不意にきしみが和らいだ
相変わらず痛みは酷いがなんとか目を開く

「起きた?でもまだ辛そうだにゃ・・・もうちっと寝てな」

声をかけ頭を撫でてきた人間はやっぱり知らないにおいがした
でも人のにおいの中になぜか同じ種族のにおいもする

「さ・・・わ・・・にゃ・・・」
「あぁごめん!」

抗議の声を上げると人間は慌てて手を引っ込めた
・・・・・・?
何かがおかしい
大切なことに気づきそうだったのに、痛みはまた眠気まで催して
流されるままに目を閉じる
もしまた目が覚めることがあれば・・・あの部屋に住む彼に
『ありがとう』と伝えたいのに






++++++++後書き++++++++
まるっとごりっと続きます
もたくたもたくた進みます
あーちゃんうなされる
同じにおいのする人間?登場
さぁ猫耳猫耳ぃ




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