なんて切ない
気ままな黒猫は週に2〜3回俺の部屋に訪れる
しかも俺が家にいるときだけ
飯時にふらりと現れて俺が家を出るときあいつも姿を消す
なんとも奇妙な猫だった
「にー」
「よ、今日も元気そうだナ」
少しだけガラス戸を開けてやると猫はするりと身体を滑り込ませる
我が物顔で家の中を歩き気に入っている(ただそこ以外居場所がないだけかもしれないが)
ソファーに飛び乗った
横に腰を下ろして頭を撫でると猫は気持ちよさそうに目を閉じる
「ちゃんと飯食ってきたか?」
「にゃ」
「つかオマエいったい何軒家渡り歩いてるんだよ」
このマンションで動物は飼えない
だからこそ気まぐれに顔を出すこいつに思わずえさを与えてしまうんだろう
俺みたいに
「管理人に見つかんなよ。ま、オマエがそんなヘマやらかすようにはみえねーけど」
喉のあたりを撫でさすってやると嬉しそうに細長いしっぽを揺らす
そういえばこいつは首輪をつけていない
野良なのだろうか?
だとしたらこいつは相当恵まれている方なのだろう
野良なのに目立った傷がない
真実かどうかは分からないが他の野良猫や飼い猫と喧嘩しないからだろう
喧嘩していたらひっかき傷の一つもあるはずなのにみたことがない
猫に話しかけているなんてちょっと病気っぽいがそこは気にしないことにした
こいつはまるで俺の言葉が分かるかのように反応するから、つい人間と同じように話してしまう
「つってもイタイことには変わりないか」
苦笑を漏らすと猫は意味が分からないとでも言いたげな表情で見上げてきた
「なんでもねーよ。で、今日は泊まってくのか?」
猫は小さく鳴くとソファーを降りて勝手に寝室へと歩き出した
ホントに賢い猫だ
「あー・・・独り身の男が猫と添い寝って・・・救いようないだろ」
小さく呟いた言葉は静まりかえって室内に溶けていった
++++++++後書き++++++++
突拍子もなく始まって見切り発車で終わるのが僕の得意技ですよ
猫とか動物に話しかけるのは全然痛くないですよ
もちろん液晶に手を振ることも痛くない
あ、名前出てない
一応
彼女と別れたばかりのシンタロー
彷徨う野良猫?アラシヤマ
という設定のパラレルだったり