replica mission




※女体化につき注意
 NovelPAPUWA【DOLCE】を先にお読みください














5月上旬 また一人、マッドドクターの手にかかり悲鳴を上げる団員がいた


中ではどんな阿鼻叫喚が・・・・・・と想像することすらはばかられる
助けたくても上機嫌なドクターの目の前に飛び出せば、飛んで火に入る夏の虫のごとくさらなる悲劇が繰り返されるであろう


そのことをよーく知っている団員達は、我が身可愛さのあまり誰一人医務室に近づこうとはせず
気の毒にと思いつつ、自分じゃなくてよかったと安堵のため息をもらした



もっとも中で実験体になっている団員・・・アラシヤマには願ったり叶ったりだったが・・・・


「すっげ・・・ほんと、よく変わるもんだナ」
「あったりまえです。私を誰だと思ってんですか」


新薬の成功を当たり前だと豪語する高松と
その制作を依頼し食い入るように結果を見つめるシンタロー

新薬を試飲したアラシヤマといえば鏡に映る変わってしまった己の身体をただ呆然と眺めていた
服の上からでもそれと分かる膨らんだ胸、縮んだ身長、丸みを帯びる肩


どこからどう見ても、女性の身体


「あ・・・りえへん・・・」
「声帯も完璧ですね。これなら誰も分からないでしょう」
「そう言う問題やあらしまへんわ!!!」


思いっきり声を張り上げたがいつもより数段トーンが高くて嫌になる
いつもはちょうどいい団服も縮んだせいでずいぶんと余りがあった

助けを求めるようにシンタローに目をやるが、残念ながらこの薬の作成を依頼したのが彼だ
助けてくれるはずがない
それどころかかなり嬉しそうだ


何故こんな事態に陥っているか・・・・
それは数時間前に遡る必要がある
















サイン待ちの書類をシンタローに届けるため総帥室を訪れていたアラシヤマ
今日も特に問題はなく穏やかな日だ
これで残業さえなかったら最高なのだろうけど、このペースだと時間通りに終えることなんて出来ないだろう
まぁ、いつものことで、平和そのものだ


「サインお願いします」
「あぁ。そこの終わってるから持って行ってくれ」
「分かりました」


手渡した書類にさっそく目を通し始めるシンタロー
最近普段よりも忙しそうだった
何か力になれることがあるといいのだけれど・・・・・・
彼はきっと自分一人の力でやり遂げてしまう
せめて邪魔になる前に帰ろうと書類を抱えるとシンタローが突然顔を上げた


「アラシヤマ・・・・・」
「はい?まだなにか」
「いや、じゃなくて・・・・相談があんだけど」



相談・・・?



あの親しい友達に悩み事などを打ち明け、打開策をともに見つけだすあの相談?(違う
聞いたとたんアラシヤマの目の色が変わった


心友から・・・・相談を持ちかけられてしまった・・・・・


その事実が嬉しくて確認を怠ったのがいけなかった
どうも彼が関わってくると周りが見えなくなるようだ
端から見ればすぐに分かることだが、本人は全く気づいていない

それを見越してか、だめ押しのようにシンタローはあの言葉を口にする


「これはな・・・心友のオマエにしか相談できないことだ」
「っ!!シンタローはん!!!わてでよければなんでもしますえ!!!!」
「あぁ、俺のために頑張れアラシヤマ」


と、まぁここまではよかったのだが・・・

その相談とやらの内容を聞く前に医務室へと連れ込まれる
そして中にいた気味の悪いほど機嫌がいいドクターから一錠の薬を手渡されたのだった

何の変哲もない、ただの風邪薬のような錠剤
なんだか嫌な予感がした
でもこれが相談の内容なのだ、と思い切って口に運ぶ

これさえ飲めばシンタローはきっと喜んでくれる

そう信じて呑み込むとすぐ強烈な目眩に襲われた
ヤバイ薬だったんじゃないだろうか・・・と今更ながら後悔した
ドクターが作ったのだから死ぬことはないだろう
色々な意味で死ぬより危険な気もするが


程なくして目眩が治まると、何故か見える風景が違った
おかしい・・・・
シンタローはあんなに背が高かっただろうか?
せいぜい7cm差のはずなのに・・・・

そして目の前に出された身体全部が写るような大きな鏡を見せられ






絶叫










悪夢だ
何度目を閉じ開いてみても元には戻ってくれない
性別を変えるような薬がいとも簡単にできていいのか
神を信じているわけではないけれどこれはさすがに冒涜だろう


「効果は5時間です。それじゃ、私はグンマ様の元へ行きますから」
「あぁ。急がせて悪かった」
「ちょっ!?まっ!!!」


いそいそと準備をして出て行ってしまった高松

重い沈黙がその場を包み込む
アラシヤマはいっそのこと逃げ出してしまいたかった
今ここでシンタローに迫られたら抵抗できない
いや、それはある意味いつものことだが・・・

とにかく、この格好で逃げ出したら・・・
アラシヤマに起こっている変化が勘の鋭い者ならばすぐに分かってしまうだろう
そして、その後の展開もだいたい読める
団内に女は一人もいないのだ


「逃げねぇ方がいいと思うぜ?」
「わてもそう思います・・・」
「で、相談始めてーんだけど」
「へ?こ・・・これが相談したかったことちゃいますの」
「はぁ?ちげぇよ・・・まぁ、一端であることには違いねーな」


これがしたかったことではない
そう聞いてアラシヤマはほんの少しだけ胸をなで下ろす
もしかしたらこの身体で相手をさせられるのか、なんてちらりと思ってしまった
だが一端と言っているところが怖い


「あー・・・オマエさ。俺が見合いしたこと覚えてるよな?」
「あぁ・・・I国のお嬢さんどすか」
「そうだ・・・リナリアっつうんだけどよ。双子の・・・妹だっけ?まぁいい、その妹が
『姉をふるほどの美人なら見てみたい』って言ってきてよ」


何故?
意味が分からない
どこに見る必要があるんだ、その双子の妹に是非とも聞いてみたい
アラシヤマは自分の今の姿を棚に上げこれだから女は分からないと思った


「お断りできまへんの」
「それがな・・・もし見せてくれたら条約でも協定でも調印するつっててさー」
「そら是非ともお願いしたいもんどすなぁ」
「「・・・・・・・・・・」」


平和条約があればI国だけではなく近辺の国との関係も友好に保たれる
団にとってはかなり魅力的な提案だ
総帥とのお見合いが破談になったからだけではないが、微妙な関係になっている今
この話を断るのはかなり難しい

なんて一般団員でも分かる
それにあちらの国に赴くならば刺客がいてもおかしくはない
死んでも生き返るような彼が殺されるなど、まずないだろうがどちらにしても護衛は必要になる
士官学校時代から今までお互い唯一安心して背中を預けらる相手だ
アラシヤマが護衛の面では適任だろう
だがあくまでも目立たない護衛が適任なのであって婚約者の代理は難しい
人前は苦手なのだ

仕事だ任務だと考えればいい

そう言われるかもしれないが、シンタローの隣にいていつまで冷静でいられるか・・・
どうしても無理だと思ったアラシヤマは何とか考え直してもらえるように、ミヤギやトットリの名前を出す
・・・が0.2秒を上回る速度で却下される


「なして!?わて人がぎょうさんおるとこ苦手なん知ってますやろ!しかもそない大事なことにわてを使わへんでも・・・」
「お・れ・は・嘘でもオマエ以外とはこんなことしたくねぇんだよ」


こういうとき真剣な目でじっと見つめるのは反則だと思う
流されまいと顔を逸らしても真っ直ぐな視線が突き刺さる
一度言ったら何が何でも最後までやり遂げてしまうのが彼
ならば拒否権はあってないようなモノだ
それに少し・・・いや、かなり嬉しかったりする


『嘘でもオマエ以外とはこんなことしたくねぇんだよ』


自惚れだろうか
と、不安にもなるが紛れもない言葉はアラシヤマの心を温かくした


「分かりました。わてでええんやったら、協力します」
「そうか!頼んだぞアラシヤマ」


断ってもどうせ手伝うことになりそうだ
どちらにしろ見合いを断った責任の半分は自分にあるのだから

それからのシンタローは早かった
高松から預かっていたという解毒剤(?)を飲ませ、戻るまでここから出るな、という言葉を残してすぐに総帥室へ帰ってしまう
程なくして強烈な目眩と共に元に戻った身体に安堵のため息をこぼし、アラシヤマもまた自分の部署に帰った








猫の手も借りたくなるような忙しい日々を送り、あっという間にその日
I国主催のパーティーが行われる日はきてしまう





パーティーが始まって2時間経過
シンタローとアラシヤマは会場中の視線を集めていた
それもそのはず
シンタローはわざわざおろしたというスーツを、アラシヤマはシンタローが見立てたという着物を着て参加している
圧倒されてしまうような美しい光景に皆が息をのみ、振り返った

だが視線を浴びせられる本人にとってはたまったモノではない
ありとあらゆる方向から浴びせられる好奇の目に、アラシヤマの限界はもうそこ
許されるのならば逃げ出したい
だが、腰に回されたシンタローの腕がそれを許してはくれなかった
そして参っている理由はもう一つ
好奇の目に入り交じる絡みつくような視線を先ほどからずっと感じていたのだ
それが何を意味するか嫌と言うほどよく知っているため
ひたすら気づかぬ振りをして耐えることを余儀なくされていた


「お久しぶりです、シンタロー様」


不意に人ごみの奥から女性の声がした
視線が2人から声をかけた女性に集まっていく


「リナリア様!このような盛大なパーティーへお招きありがとうございます」
「いえ、先日はロベリアが大変な失礼を。お許しください」


2人が作る独特の雰囲気に誰もが近寄ることを躊躇った
それは婚約者という役割で来ていたアラシヤマも同じ

写真で見たときとはまた違った美しさを持つリナリアとシンタローのツーショットは案外精神的ダメージが大きい
あぁやはり来るんじゃなかった、などと今更後悔が頭をよぎる
その後ろから同じプラチナブロンドをしているが、長くのばしているリナリアとは対照的なショートカットの女性も現れた


「ご機嫌ようシンタロー様」


事前に聞いた話によると彼女が双子の妹、ロベリア
誰もが近づくことを躊躇った2人の間に入り込み、シンタローを挑発的に見上げる姿はとても双子とは思えないほど違いがあるが・・・

シンタローは令嬢と言うにはほど遠い態度も気にせず余裕でロベリアに頭を下げた


「ロベリア様。お招きありがとうございます」
「挨拶はいいわ。それよりあなたの『婚約者様』とやらはどちらにいらっしゃるのかしら?」


話を振られアラシヤマはビクリと体を揺らす
それで存在に気がついたのか、ロベリアは値踏みするように頭の先から爪先まで じっくりと眺めた
リナリアの登場で幾分和らいだいた視線がまたもや全身に突き刺さる
先ほどよりも酷さを増した居心地に無意識に俯く

黒の生地に赤や紫、白の華が咲き誇る美しい着物を身にまとった漆黒の髪の女性
どこか愁いを帯びた濃紫の瞳は伏せられて、色香と上品さを漂わせる
それは端から見ればため息を漏らして見入るほどの美しさなのだ


「うーん・・・・・確かに・・・姉さんと張る位美人ねぇ」
「ロベリア!」


はしたない行動と口調を姉として窘めるように言うが、まさに馬の耳に念仏
感嘆の声を上げつつ穴が開くのではないかと思う程見続けていた

小さくため息を吐いたリナリアは、何とか話題を変えようとアラシヤマに話しかけてくる


「お名前を伺ってもよろしいですか?」
「え・・・はい。わ・・・・私は」
「彼女は嵐と言う日本の方です」


シンタローの機転で間一髪本名を晒さずに済んだ
名乗ってしまえばアラシヤマが一般団員であり、婚約者が偽物だと露呈するかもしれない
そんなことになればもう断る理由もなくシンタローが結婚してしまう

素直に信じてくれた彼女には悪いが、これも戦略のうちなのだ
無理に取り繕った笑顔で今一度嵐ですと言えば、リナリアは瞳を輝かせた


「嵐様・・・素敵なお名前ですね!本当にお美しくて、さすがシンタロー様の選んだ方だけあるわ」
「リナリア様も十分美しいと思いますが?」


また談笑を始める2人にアラシヤマは疎外感を感じた
拘束していたシンタローの腕はない
すでに人々の注目もまばらで、今ならば会場を離れることも可能のはず
このままあんな笑顔を浮かべるシンタローの側にいたらへたり込んでしまいそうだ
できるだけ目立たないよう出口へ向う
シンタローに呼び止められたら適当に返事をしておけばいいのだ

その時、出来ることならば一番見つかりたくなかった人物に呼び止められてしまう


「嵐様!ちょっとお話に付き合っていただけないかしら」
「ロ・・・・ロベリア様」


にっこりと笑う顔はリナリアのそれと全く同じ
だが・・・・
なぜだろう、とても嫌な予感が・・・・・・


「ごめんなさいね?これも姉さんの幸せのためなの」
「はい?・・・・・っ!?」


いきなり背後から口に布を当てられたかと思うと、急速にアラシヤマの意識は遠のいていく


(シンタロー・・・・・はん)


最後に見たのはロベリアの鮮やかな微笑みだった















近くで誰かの話し声が聞こえる
聞き覚えのない男の声が2つと聞き覚えのある女の声が1つ

目を開けて初めて自分が眠っていたことを知った
だが目の前は暗闇のまま
状況を確認するために手足を動かしてみるが、両手は後ろ手に足首はひとまとめにして縛られている
どちらも縄であることは肌触りで明確だった
燃やせるモノならば脱出は簡単だ
周りが静かということは今いる場所は会場ではない
目隠しのため明暗は分からないが、会場内のどこかにある部屋だろう

目隠しに縄での拘束そして監禁
誘拐?それともガンマ団に対する挑発行為?
とにかく確認しなければ
一国の令嬢がこのような暴挙にでた理由を

バランスの取りづらい身体をゆっくりと起こすと人が近づいてくる気配を感じた


「目ぇさましたか。婚約者さん」
「んぅ!んんっ」


声が出せない
ご丁寧に口まで塞いでくれているとは、なんともまぁご苦労なことである


「ククッ残念だな総帥はこねぇよ」
「あぁ、今頃はリナリアお嬢様と楽しくお話中だ」
「!?」


男の下卑た笑いが耳元を掠める不快感に消し炭にしてやりたいという暗い衝動に駆られる
しかし今までの努力が水の泡になるのは非常によろしくない
一応一般人らしく驚いているふりをした
戦場に出ている身であったため、このような状況にはあまり嬉しくはないが慣れているのだ
当時はその場にある全てを焼き尽くし逃げ出していたが、さすがにここで炎を上げることは躊躇われる
聞き覚えのある女の声は確かにロベリアのもの
いくら捕らえられているとは言っても彼女を燃やすのはまずいだろう


「さて、そろそろ嵐様とお話しさせて」


命令された男は指示通りアラシヤマの口を塞いでいたものを外した
殺されると思ったが話をさせてと言うからにはすぐに殺す気はないらしい
コツコツとヒールが床を踏む音が近づく


「手荒なまねをしてごめんなさい?どうしてもあなたにはシンタロー様と別れていただかなければならないのよ」
「どうして・・・・ロベリア様がこのようなことを」
「教えてあげられないわ」


教えられないと言うことは国政に関係している可能性がある
発展著しいI国も問題を抱えていると言うこと
それでガンマ団総帥の婚約者を攫うなど、ずいぶん思い切った行動に出たものだ
それほど今回の見合いにかけていたと言うことか・・・・


「あなたがどこの誰で、どうやって出会ったのかは知らないけれど。身を引いていただきたいの」
「・・・・・できません」
「どうして!?あぁ、あなたもガンマ団総帥夫人の椅子が欲しいというわけ」
「違います。私には総帥であろうとなかろうと、関係ありません」
「意味が分からない。ならあなたは何故婚約なんてしたのよ!!」

「好きになったのが・・・・・あの人だったからです」


ロベリアの目は見えないが、アラシヤマは目を合わせるように顔を上げはっきりと宣言した

虚を突かれたとでも言うようにロベリアは沈黙する
これで彼女が諦めて解放してくれるとありがたいのだが・・・・・
そう上手いこと話が進むわけない

長く重苦しく息を吐いたロベリアは、黙って話を聞いていた2人の男に声もなく何かを指示した


「本当は私もこんなことしたくないけれど・・・」
「?ロベリア様なにを・・・・」
「大丈夫、殺しはしないわ。けどもし汚れてしまえば、あなたは婚約者であり続けられるかしらね?」


笑みを含んだ声に悪寒が走った
『汚れてしまえば』?
意味は図りかねた
それでも暗に何かをほのめかしている

どうやらゆっくり縄を斬っている時間はないようだ


「それじゃあ私は戻るわ。あなたたち、ちゃんと口は塞いであげて」
「分かりました」


それだけ言い残すとロベリアは本当に出て行ってしまった
扉を閉める音が話す人のいなくなった静かになった部屋に大きく木霊する


(また塞ぐんか・・・・息苦しいから勘弁して欲しいんやけどなぁ)


なんてのんびり考えていた
だがアラシヤマが考えていたような生易しいことではなかったのだ
先ほどと同じモノで塞がれると思っていた口に柔らかなモノが押し当てられる
シンタローと違う匂い、違う感触
頭が一瞬にして真っ白になると同時に、鳥肌が立った

そして理解してしまう
『汚れたら』
つまり力尽くでシンタローから遠ざけるつもりなのだ
いきなり連れ去られて、無理矢理・・・・
そんなこと相談したら問答無用でI国は潰される
闘争をけしかけることなどできるわけない
理由を話すことも出来ず、お互いの溝は深まっていくばかり
そして結局は破局へと向かう
ある意味完璧な作戦だ


「やっ!!!やめ・・・・」
「おっと、大人しくしてな。あんただって怪我したくないだろ?」
「しかし俺らも役得だよなぁ。こんな美人とヤれんだから」


推測は確定へと変わった
一度離れた唇がまた押しつけられ、無遠慮に入り込んできた舌はアラシヤマの口腔を蹂躙する
残ったもう1人もはだけた着物から覗く白い足を丁寧に指でなぞっていた

吐き気すら感じる行為をアラシヤマは必死に耐え忍ぶ
もう少し・・・・
もう少しで縄が切れる
ロベリアと話していた時から指先に小さな火を点して縄の切断に取りかかっていたのだ

そして、ようやくブツッという音を立て縄が切れる
気づかれるかと思ったが唇を貪ることに集中している男には聞こえていないようだ
そのままアラシヤマは自ら口づけを深くしていく
身体が近くなり隙ができれば、気絶させられる

思惑通り、男は着物の袷に手をかけてきた
アラシヤマは間髪入れず腹に拳をたたき込む
すると男の身体は見事に吹き飛び壁に激突すると簡単に気を失う

突然の出来事をぽかんとした顔で見ていたもう1人も素早く手刀で眠らせた
ようやく自由になった手で目隠しと残った縄を焼切る
強く縛られていたせいか、暴れたせいか、手首には鮮やかな痣ができていた


「ったく、あんお嬢様はなに考えとんねん」


見れば気絶した2人はまだ若い
おおかた理由も教えられずに雇われたチンピラ、と言ったところだろう


「あんたキス下手。わてとシたいんやったらもっと練習しなはれ」


伸びている男を見下し身も蓋もないようなことをさらりと言い放つと、乱された服装を軽く整えアラシヤマも部屋を出た
もちろん近くにあった縄でこれでもかという程縛り上げた後だ

動きにくい服であったが一人残してきたシンタローが気にかかる
危害を加える可能性は低いが今の彼女はなにをしでかすか分からない


「シンタローはんっ」


小さく呟いた言葉は広々とした廊下に虚しく響く












時を同じくしてシンタローはいつの間にかいなくなっていたアラシヤマを探して いた
何度辺りを見回してもどこにもいない
そしてロベリアも


「シンタロー様?いかがなされましたの?」
「いえ・・・・そう言えばロベリア様がいらっしゃらないなと思いまして」

「私はここにいるわよ」


そこには先ほどまでいなかったはずのロベリアが
しかし、アラシヤマの姿がどこにもない
探しに行きたいが、リナリアがずっと側にいるため怪しまれず会場を離れるのは至難の業

それでも直感がアラシヤマの身の危機を感じていた


「ロベリア様。嵐を知りませんか」
「あ・・・・・あの方なら先ほど会場を出て行かれましたわ」
「・・・・・・本当ですか?」
「え・・・・・えぇ・・」


何事にもはっきりと口に出す彼女がここまで言い淀むとは
どうやらアラシヤマの行方を知っているようだ
問い詰めようとしたとたん、会場のドアがゆっくりと開いた
そこにはずっと探していた彼の・・・いや、彼女の姿があった


「あ・・・・・・嵐・・・・様!?」
「どないしはったんどす?ロベリア様」
「なんで!?あなたは彼らに・・・っ」


口を滑らせたことに気がついたロベリアは慌てて口を噤む


「詳しくお聞きする必要がありますね・・・・ロベリア様」
「・・・・・・・・・・・」


その後パーティーは滞りなく進み、最高の形での終わりを迎える
ロベリアの行いは協定の調印とアラシヤマへの謝罪で表沙汰にはされないことになった

どうしてこんなことをしたのかと聞くと
I国は発展が著しくなった代わりに各国とのバランスが崩れ始めており、他国との闘争がいつ起こってもおかしくない状況だった
そのため世界有数の権力を誇るガンマ団を自由に動かせる力が欲しかった・・・・ということらしい

そして、もうひとつが姉の幸せ

ロベリアが本当に考えていたのは国のことよりこちらだろう












「・・・・・アラシヤマ」
「なんどすか?」


帰りの車の中、ポツリとシンタローは助手席に座るアラシヤマへと語りかる


「悪かったな・・・・オマエに嫌な思いさせたみてーで」
「なぁに言うてますのん。『婚約者』楽しかったおすえ」














こうして波乱に満ちた一日は無事に終わりを告げたのだった











++++++++後書き++++++++
このお話はDOLCEの続きとなっております

思いついたのが3月下旬
思わぬ長さと思わぬ動きになってしまいました
キャラが勝手に動くとはこのことだ
というのを本当に実感しました
なんかもう・・・・・時間かかりすぎだ

とにかくシンちゃん誕生日おめでとう!
全く誕生日らしくない誕生日だけれどww