昔、ある所に妻を亡くした大石という貴族がいました。
「あぁ・・・妻よ、どうして先に逝ってしまったんだ・・・」
悲しむ大石を見ていた魔法使い英二がそっと大石に話しかけました。
「大石、悲しいのは分かるけど・・・いつまでもそうしていられないだろ?再婚しなって」
「英二・・・」
「おまえには絶対に奥さんが必要だよ!俺も探すの手伝うからさ!」
「有難う英二・・・そうだな、じゃあ新しい妻はえ「あの人なんかは?すっごい美人だよー」
英二が指を指したのは隣村から妻の葬式に出席するために来ていた不二でした。
「あの人は不二だよ。俺の親戚だ」
「へぇ〜!きれいな人だにゃー」
「確かあいつは離婚したばかりだと言っていたな。」
「じゃあ丁度じゃん!話しかけてきなよ」
「しかし・・・」
「いいからいいから!」
大石は英二のことが好きでしたが、面と向かって言えるはずもなく・・・
と言うか、それとなく遠回しに言っているのですが英二自身が全然気がついていないのでした。
けっきょくその後不二に話しかけ再婚した大石を皆が・・・特に英二が喜んで祝福してくれました。
しかし、大石の心は不二ではなく英二に行っているのでした。
不二には手塚と桃城という連れ子がいて、桃城は不二と同じ心根の持ち主でした。
大石にも子供がいました。越前という名前でとても美しく心の優しい子ですが、とってもクールな性格で生意気でした。
婚礼が済むと不二はたちまち本性を現し越前に家中のツライ仕事を押しつけました。
「越前!メシまだかー」
「はいはい・・・」
「越前、紅茶飲みたいんだけど」
「はいはい・・・」
不二と桃城は色々な雑用をさせましたが、手塚だけは何も言いませんでした。
それに、時には簡単な家事を手伝ってくれることさえありました。
手塚が気になり始めたある日、お城では王子様の乾が花嫁を選ぶための相談をしていました。
「舞踏会を開いたらどうだろう?会場には人がたくさん来る。花嫁も見つかりやすいだろう。確立はおおよそ80%というところか」
というわけで、国中の美しい人がお城の舞踏会に招待されました。
「母様、城の舞踏会への招待状が来ました!」
「それは良かった、王子様と結婚できるチャンスかもしれないね」
「越前!早く支度を手伝え!」
「はい、ただいまー」
越前は嫌々桃城の支度を手伝い終えると、不二に聞きました。
「俺も舞踏会行って良いッスか?」
すると不二はバカにした様に笑いました。
「フフ・・・なに言ってるの?そんなぼろぼろの服しか持っていないくせに。連れて行けるわけ無いでしょ?」
「母様!早く行こうぜ、舞踏会に遅れちまう!」
「手塚と先に行ってていいよ。僕は外で人を待たなきゃいけないから。」
「わかった」
「じゃあな越前、楽しんでくっからな!」
そう言うと、越前をおいてお城に行ってしまいました。
それを家の外で見ていた大石と英二は・・・
「おチビ・・・」
「英二、越前をお城の舞踏会に行かせてやってくれないか」
すると英二はニコリと笑顔になり
「そー言うと思った。OKいってくるね」
そう言うと英二は家の中に入っていきました。
(ふーん・・・やっぱり浮気してたんだ)
外に出ていた不二は偶然大石と英二がいるのを見ていました。
(まぁ、僕には関係のないことだけど・・・)
不二はあまり人に感心がない方でした、が
(その浮気相手がまさか・・・ねぇ)
そして不二は浮気していた相手のもとへ向かいました。
舞踏会に連れて行けないと言われたとき
あんたの側に
俺は居たかったんだと
初めて知った