雨の日の匂い



雨の日は空気が凜と澄んでいて
あのひとみたいだと思う
あの人って言うのはテニスがかなり強い人
強すぎる相手へのコンプレックス
手の届かないところへ行ってしまいそうな
やっと追いついたと思ったらその時にはもっと前にいる
そこに自分もちゃんと向かえているのかという不安感
いつもは生意気だとか言われてるけど・・・
あの人といるとこんなにも弱い自分


「おチビも大変だにゃ〜」


お気楽な顔して俺の話を聞いているのはかまってちゃんな先輩
大変なのはあんたもなんじゃない?
だって先輩の恋人は青学の天才
追いつけないかもしんないとか考えないんスか


「追いつけなかったら努力して絶対に追いついてみせる!!」


追いつける保証なんてどこにもないケド・・・


「わかってにゃいな〜おチビは」


なにが?
ていうか俺は分かってるつもりっス
いくら努力したって追いつけないこともあることとか


「それが分かってないんだって。お前はさ、信じてないわけ?」


信じてるっスよ
当たり前じゃん


「どんなに手の届かないところに行っちゃっても、あいつは・・・不二は絶対に俺のこと連れて行ってくれる」


連れて・・・


「そ、不二は俺の手握って一緒に歩いてくれる。俺はそう信じてるんだ。だから 手を握ってもらえるくらい側にいる
それが俺の目標!」


先輩は胸を張って言った
それでいいんスか


「俺はね」


穏やかな笑顔だったけど強い決意なのがわかった
どうしてそんなに強いんだろう
その時部室の扉が開く


「不二!」


先輩はすぐに入ってきた先輩に抱きついた
いつもべったりくっついてるくせによく飽きないよね


「英二、結構捜したんだよ?先に行くときはちゃんと言ってね」
「にゃはは・・・ゴメンにゃさい」


先輩たちがいちゃつき始めたから俺は部室を出た
人前で恥ずかしいとか思わないんスか
でもそんな疑問はただ俺が・・・英二先輩みたいに振る舞えないのが原因だなんてことにはとっくに気づいてる
俺はテニスに関しても恋愛に関しても先輩方にはまだ適わないってことだ


「まだまだだね」






自分に放つこの言葉

きっと明日からは強くなれる

あの人なら上手に甘えられなくてもありのままの俺を好きでいてくれる

俺もいつかあの人に追い付けなくても手を握ってもらえるくらい近くにいよう


部長への想いをそっと抱きながら

雨の匂いのする大気に誓う








++++++++後書き++++++++
生意気じゃない素直な越前君
まぁたまには弱みを見せて恋愛に関しては大先輩の英二に聞いています
弱気な越前もまたカワユスv
今回はまたちょっと違う作風にしてみました
いかがでしょうか?



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