酔っていた、なんて通じない!
かわいいかわいい飼い猫がご主人様に甘えてじゃれついてくる。
それはとても心が和む光景なんだろうけど、人の姿となると和むっつー言葉で片付けていいレベルじゃないよな。
しかも相手は酔っぱらいとか、どうしろって言うんだよ!
あまりにも脈絡なく突然「好きだ」と告げられて、なにがなんだか分からないまま押し倒されて、さらに口を塞がれるという異常事態
原因はテーブルの上に上がっているマタタビだった。アラシヤマが言うには『お裾分け』としてもらったらしいんだけど・・・・・
こんな事になるならお裾分けくれる前に俺に連絡してくれ
今更にも程があるが、そう思わずには居られなかった
さて、これからどうしようか
HSのことを考えると突き飛ばすわけにもいかない、誰かに助けを求めることもできない
かといってこのままにしておいたら、何をされるか分かったもんじゃない。と言うかその前に俺がナニをしてしまいそうだ
だってさ、真っ赤な顔をして無防備にへにゃって笑うのは反則だと思わねぇ?
コイツはガードが堅いっつうか、遠慮してる節があるからこんな表情今まで見たことがなかった
しかも見下ろされているもんだから普段隠れている左目がばっちり見えてる
黒と見間違えそうな程濃くて深い紫色の瞳は酔っ払っているせいで涙の膜が張って潤んでいて、さらに可愛さ倍増
誘われているんじゃないだろうか?と勘違いしそうになる
でもきっとコイツが言った「好き」と俺の抱いている「好き」は種類が違う
俺の「好き」はドロドロしているとびきりやっかいで重たいものだ。
コイツが家の中でずっと主夫業をやっているのは、外の世界になれていないからだけじゃない
俺が外に出したくない、そんな理由だけだったりする。
マンションの中だけという狭い世界に閉じ込めておくのは少しだけ良心が痛むけれど、他の誰かに取られてしまうくらいなら
飼い殺しのような状態でもかまわないとさえ思ってしまう。
髪と目の色は違えども俺だって青野一族の端くれ
たとえどんな手段を使おうと己が欲したものは必ず手に入れる事を幼い頃からたたき込まれてきたせいで
頭ではどうやったら俺から離れられなくなるのかを考えるばかり
これまで付き合ってきた彼女たちに散々「重い」と言われたのも、強すぎる執着心だと分かってはいたが止めることなんてできなかった
こんな暗い思いを何も知らないコイツに向けるのはどうかと思うけどすでに手遅れだ
手放せるはずがない
落ち着きを取り戻した俺は夢中で唇を触れ合わせるアラシヤマの頭を撫でてやった
強硬手段を取れないなら満足してからやんわりと止めてやろう
ここまでされているのに、こちらからは全く手を出せないのは男として結構つらいものだけど・・・
アラシヤマの意思を無視して事に及ぶのはどうも気が引けるから仕方ないよな
このままずるずる飼い主以上恋人未満という曖昧な関係を続けていく気は全くないが、一線を越えるタイミングは今じゃない。
俺を飼い主以上の存在として好きになってから、なんて理想論かもしれないけど
その日が来るまで耐えてくれ俺の理性
でもせっかく舞い込んだチャンスを見逃してやれるほど俺も善人じゃなかった
これ以上エスカレートしない程度、軽いスキンシップの範囲内ならたぶんセーフだ
相も変わらず手触りのいい髪は梳くと絹糸のようにさらさらと滑り、指の間をあっさり通り抜けてしまう。
俺と同じシャンプー使ってるのに何でここまで違うんだ?体質か?
何度となく繰り返していると撫でられるのが余程気に入ったのかアラシヤマが唇を離し俺の手に頭をすり付けてきた
人になってからコイツの色々な表情とか見てきたけれど、こういう仕草は猫の時と変わらない
「気持ちいいか?」
「・・・?」
訪ねたことに対してアラシヤマは不思議そうに首を傾げる
「気持ちいい、てコタローはんにも聞かれたんやけど・・・気持ちええってこういうことを言うんどすか?」
・・・はい?
「オマエ、まさかシたことねぇ、とか?」
「は?なにを?」
「何ってセッ・・・・質問変えるか。発情期は迎えたことあるよな、さすがに」
「そらあります。せやけど動くのもおっくうやったさかい、ずーっと寝てましたわ」
「・・・つまりハジメテなわけね」
完璧に失念していた
このマンションはペット禁止だ。故に年齢的には大人であろうと相手は居ないだろうし、この付近で生まれ、他の野良猫と交流を持っていないときたら
そりゃハジメテの可能性は高い
男で、元猫で、その上初物なのか。そうか。思っていた以上にハードル高すぎんだろ!!
でも初物と聞いてちょっと嬉しい・・・とか思ってないから!断じてないから!
「や・・・やりかたくらい知っとります!ヒトのは知らへんけど!」
てっきりグンマがそういうこともしっかり教えてくれているものだと思っていたから、半ばやけくそ気味に吐き捨てられた言葉はかなり意外なものだった。
そっか・・・そうだよな、グンマがそんなことを前もって教えてるはずないよな。
それはかなり美味しいくねぇ?つまり俺好みに最初から教えられるって事だろ?とか言うとちょっと変態くさい気もするけど、あえてスルーだ。
ん、ちょっと待て。今コタローに気持ちいいか聞かれた、とか言わなかったか
コタローがコイツに触れたのはあの時以外あり得ないだろうし、まさかキス以外も何かされて・・・・?
「そん時コタローに何されたか覚えてっか?」
ここまで期待(?)させておいて弟に美味しいところ全部持っていかれてました、とかマジで洒落になんねぇんだけど
男としての沽券と兄としての威厳に関わる
「ただ耳触られて、カンジやすいとか、心配だ、とかなんとか言われただけどす」
本当かと念を押して聞いてもそうだと首を縦に振るばかり。酔っ払って暴走してるんだから嘘じゃないのは分かった。
予想と違う答えに安心したと同時にどっと疲れた気がする。
「そっか・・・なら、いいんだ」
「そないに心配なんやったら、確かめてもええよ」
唾液で濡れた唇に笑みを刷いたアラシヤマは、ほっそりした指をシャツのボタンにかけ、見せつけるようにゆっくりと外していく
こういう時に限って何でシャツなんか着てんだコイツは!!や、買ってやったのは俺だから俺が悪いんだけれども
吸い寄せられるようにアラシヤマの手元に視線がたどり着いた。
浮き出た鎖骨とマタタビのせいで薄く色づいた喉元はやたら色っぽくて、噛みついてその真っ白な肌に赤い華を散らしたくなる
蠱惑的な微笑みと俺を魅了してやまない容姿、仕草。やっぱり外に出さなくて正解だ。危険すぎる
ボタンを全部外される前に、今日はしないという決心を揺るがせた罰として、髪と同じ色をした耳の形を優しくなぞってやった。
するとアラシヤマは引きつった声を上げ、同時に耳がこれ以上の接触を嫌がるようにぺたりと頭につけられる
本当だ、さっきと反応が全く違う。耳も性感帯なのか。へー、それはいいことを知った。
酔っているからなのか、元々感度がいいからなのか触れるたび過敏に反応してピクピクと動く猫耳がかわいくてたまらない
不謹慎かもしれないが尻尾もあればな・・・とかつい思ってしまった。
なんかヤバイ方向に目覚め始めている気がしてならないんだけど、大丈夫だろうか?
俺の手で色づいていくアラシヤマをもっと見てみたいという抗い難い欲求に駆られ、伏せられた耳を揉むようにして内側に指を進入させる。
意外にも毛が薄いのか体温が直に伝わってきた
実はこうしてしっかりと触るのは初めてだったりする。退化したのがコイツを酷く悲しませた時だったから、無意識的に避けていたのかも知れない
しばらく無心で揉み続けていたら、アラシヤマが耐えきれないとでも言うように頭をふるふると振った
「シンタロー、はんっ・・・耳やめておくれやす」
「あ、悪ぃ、痛かったか?」
「痛くは、ないんどすけど・・・」
痛くないと言われ、ならば大丈夫だろうと高をくくってさわり続ける。
困惑しながらも襲い来る快感を必死にやり過ごそうとする姿に嗜虐心をくすぐられて、調子に乗ったのがいけなかった
「なんや背中ゾワゾワし・・・てっ・・・うわぁ!?」
身体から力が抜けたのかアラシヤマが色気のない声とともに俺の上に座り込んできたのだ。
しかもひっじょーにまずい場所に
オマエそんな所に意外と柔らかい尻を置くなっつうの。うっかり形状変化とか起こしたらどうしてくれる。責任とれねぇだろうが。
それとも何だ、今すぐ突っ込まれたいのか?こっちは彼女と別れてからずーっとご無沙汰でぶっちゃけ溜まってんだよ!
なんて言えるはずはもちろんなく。平常心、平常心と心の中で繰り返し唱え、冷や汗をかきながら意識を下肢に持っていく。
・・・まだ、大丈夫だよな?いや、絶対に大丈夫だ。俺の分身たるお前ならいけるはず。
頼む、引っ込んでいてくれ生理現象!
そんな願いも虚しくアラシヤマが身体の位置を元に戻すためもぞもぞと動いた
結果的に俺のムスコにアイツのがゴリッと擦り付けられる。もういっそ清々しいくらいに
あの、心なしか硬くなっているような気がするのですが・・・
「オマッ何デカくしてんだよ!!」
「え?ふ、ぁっ・・・ああああ」
俺が慌てて腰を引いたせいでさらにアイツのものに圧力と摩擦が加わってしまった
スラックス越しのため感覚は鈍いけど確かに熱と質量が伝わってくる。
耳触っただけなのにここまで勃たせるとか、マタタビの効果絶大すぎるだろっつ!
不二さんとこもこうなってんのか!?まさか・・・これを楽しむために買ってきた、とかじゃ
人様の事情に口を出すつもりは毛頭ない。ないけれども、よそのお宅を巻き込まないでくれ!
そうこうしているうちにさっきの快感に味を占めたのか、アラシヤマが腰を動かし始めた
最初は恐る恐るゆっくりと、でもすぐにコツを掴んだのか動きを大胆にしていく
まさか飼い猫に襲われる日がこようとは。俺のこと抱きたいとか思っていたのだろうか
うーん・・・却下。俺だって男だし、やっぱ突っ込まれるより突っ込みたい
直接的な接触ではないため得られる快感は少ない。だがハジメテのヤツにとっては夢中になってしまう程強く感じられるのだろう
「あ、あっ、う・・・んんっ」
アラシヤマの鼻にかかったような声が俺の耳を犯し、思考を溶かしていく
我ながらこれはねーわ、と思うが今感じているものは間違いなく快感だ。
ジワジワと前が苦しくなってきて、かなりもどかしい。直接握り込み扱いて、さっさと出してしまいたい。
そんな抗いがたい衝動に駆られ、これはまずいとすんでのところで止めに入ったものの
俺の声がイくことしか考えられなくなったアラシヤマに届くはずなかった
「っく・・・やめろっ動くなアラシヤマ!」
「はあっ・・・んあ!シ・・ン、あっあああ・・・っう、ああああああっ!」
ビクビクとアラシヤマが痙攣して、それから徐々に身体から力が抜け弛緩していった。
あー、これ確実にイったな。しかもズボンとか下着は履いたまま。気の毒に
で、俺の方は・・・さすがにイキはしなかったけど、あんだけされたら普通に勃ちますよねー
ピタリと動きを止めたアラシヤマが心配になって様子をうかがうと、刺激が強すぎたのか、俺の首もとに顔を埋めて荒く呼吸をしている。
耳に直接吹き込まれるような熱い息はどうしようもないくらい扇情的だった。
調子に乗って触りすぎました、ほんと、ごめんなさい。謝るからもう勘弁してくれ。
このまま続けるのはよろしくない、とてもよろしくはないけれど、俺だって聖人君子じゃないんだから我慢の限界ってものがあってだな。
これ以上なんかしたらうっかり襲うぞ。でも、泣かせたくはないんだ。啼かせたいとは思うけれど
いつの間にか全身汗だくで、ワイシャツは張り付いて気持ちわりーし、俺の健気なムスコは半勃ちのまま放置。なんつー様だよ・・・
文句の一つでも言ってやろうかと顔を上げるとアラシヤマとしっかり目が合う
ようやく呼吸が落ち着いたのかと思えば、まだ足りないと言うように噛みつくようなキスをしかけてきた
「ん、シンタロー・・・はん」
「もっとほしい、のかよ」
掠れた声で名前を呼んだアラシヤマは、問いに答えず黙って俺を見下ろす
質問の意味が分かっていないのか、答えずとも与えられると分かっているのか、挑発するように俺の唇を舐めるコイツの考えは読めない。
そして口を離した時、ぷつりと途中で途切れた銀色の糸と同時に俺の理性の糸も切れた
元々ギリギリのところだったんだ、これでもかなり我慢した方じゃねーか。
こんな形で思いを遂げちまうのは、俺としてもすっげー不本意なんだけど、開き直るしかない
酔いが覚めた時コイツはどんな顔をするだろう。最悪嫌われるかも・・・とか思っているのにアイツのスラックスのベルトに手を掛けているあたり、救いようがない
「あの・・・これは一体なにがどうなってはるんどすか・・・?」
はぁ・・・アラシヤマがまたおかしなことを言い出した。
「まさかここまでしておいて止めるなんていわねーよナ」
「え、シンタローはん待っとくれやす!あれ夢とちゃいますの!?」
「さっきまでノリノリだったくせに何を今更・・・・・」
さっきから言動がおかしい。あれだけ俺を襲う気満々だったのに、突然戸惑いだした
もしかして、酔いが覚めた、とか?
「・・・・・・・・・・・」
最悪の予感は的中し、正気を取り戻したアラシヤマの顔色がみるみる真っ青になっていく。
結局お預けかよ!でも・・・・いいか。泣かせずに済んだことだし
「死にたい・・・・」
とんでもないことを言い出したアラシヤマに一体どんなフォローを入れるべきか。
情けない格好で俺がまず考え始めたのはそれだった
++++++++後書き++++++++
アラシヤマお誕生日おめでとう。
これからもシンちゃんの背中を守りつつ自分の命も大切にしてね。
と言うわけで、誕生日全く関係ないですがなんて54.5でした!
エロと言うよりシモネタといった方がいいような・・・
R15くらいだよね、うん。入れてないしね!tnkだしてないしね!(ぇ
発情期が合わなくて心底申し訳ない^q^
楽しんでいただけたら幸いです><
ものっそギリギリだけど今年はちゃんと間に合ってよかった−!