icebound mind



溶けない雪などないように

溶けない心はあるのだろうか

貴方の暖かさに包まれたなら

かたくなな心も

簡単に融けてしまうのだろう





雨が降ろうと、雪が降ろうと書類は減ってくれないし期限は待ってもくれない
サボっているからではない
終業時間ギリギリどころか、残業手当も付かないのに夜中まで書類と睨めっこしているのにもかかわらずにだ
まだ二山ほどあるがこれでもだいぶ減ったと言える
睡眠時間を削ってまで仕事をしているのは他でもない
大好きな、大切なあの人のためだ

それなのに・・・・
あぁそれなのにそれなのに

総帥室へ書類を届けに行ったらその人は、窓の外を眺めていました
実に優雅にそして静かに


「シンタロー総帥・・・・?」
「・・・・・・・・・・」


返事がない
書類を机の上に置いて何となく隣に並んでみる
もしかしたら同じものが見えるかもしれない
いや、同じものが見たいと思った

だが見えるのはしんしんと降り続ける雪のみ
特別変わったことなどない

すると突然シンタローが口を開いた


「綺麗だよナ」
「はい?」
「雪・・・。それと口調直せ」
「・・・・そうどすなぁ・・・せやけど、わてあんまし雪は好きやないんどす」
「へぇ・・?」
「昔わて雪だるま作ったことがあるんどす」


ちょうど師匠に弟子入りしてからそんなに経ってへん頃・・・

アラシヤマは少し俯いて言葉を紡ぐ
まるで罪でも犯したような
そんな口ぶりだ


「冷たくて、それでも一生懸命に。可愛くできたんどすえ?せやけど・・・・溶けてしまわはった」


雪やからしゃあないんどすけど

冷えた手を温めるためにともした炎は、やっとの思いで作り上げた友達を溶かしてしまった
雪は冷たい
炎は熱い
それは自分と真逆の性質を持つ
真っ白な雪
真っ赤な炎

悲しくてしょうがなかった
同時に恐ろしかった


「・・・すんまへんいきなり。今日はこのまま直帰しますわ」


変なことを話してしまったと軽い自己嫌悪に陥る
何か気に障ったのだろうか?
シンタローは何かを考え込んでいた


「おし、今から屋上行くぞ」
「は?い・・・今からどすか!?」
「文句・・・あんのか?」
「や・・・別にありません」
「よし」


訳が分からぬまま連れてこられた屋上には雪が積もっていた
スラックスの裾が濡れるのもかまわずに中央まで進む
なんだろう?
なにがしたいんだろう?
しゃがみ込んだシンタローに倣いしゃがむと彼は小さな雪の塊をコロコロと転がしていた

止めなければ
シンタローが何をしたいのかすぐに分かった
だからこそ止めなければ
風邪を引いたら自分のせいだ
たかが自分のためにシンタローが苦しい思いをするのは嫌だった


「シンタローはん、風邪引いてまいますえ」
「これくらいなんともねーよ。それよりお前も手伝え」
「何言うてますのん!そないなことより・・・」
「辛かったんだろ」


分かってるから
知っているから

ぎゅっと手を握られた
雪のせいでいつも温かな手が冷たくなっている


それでも
氷のようなトゲが刺さっていた心には充分すぎるほど暖かくて
嬉しくて
泣きそうになる



「また溶けたら何度でも作ってやるよ。一緒にナ」



優しい貴方が大好きで
ただ辛かっただけの雪が好きになれそうだ








2人が去った静かな屋上には
小さな雪だるまが2つ
寄り添うように残っていた






++++++++後書き++++++++
レッツノリ
勢いで書いたので山なし意味なし落ちなし(最悪
とにかく雪とアラシヤマを書きたかった!!
題名は氷雪に閉じ込められた心という意味です
もう少し上手く使いたかったな・・・・と




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