銃と硝煙




夢を見た


ガンマ団に入団する前


僕がまだ忍びの里にいた頃だ


修行の合間、森で一番高い木に上って遠くを見る


ここでの生活でも好きだけど、ここではないどこか遠くを夢見る


修行はどれも辛く厳しいものばかり


だから木の上が一番好きな時間だった


なにも考えず目を閉じる


全てから心を閉ざして


僕は無意識にそうして


心を守っていたのかも知れない







ずいぶんと近くで発砲音がして飛び起きる
そうだ僕は見張りを任せて仮眠を取っていたんだ
隣にいたはずのミヤギくんがいない
起き上がって辺りを見回すと、瓦礫を背にそっと外の様子を伺っている所だった



「ミ・・・ヤギくん?」
「トットリ!起こしつまったが?」
「ううん。大丈夫だっちゃよ。僕ぁそげに眠り深くないから」
「んだが。そういや近くでまた脱落者が出たみたいだべ」



あぁそうだ
今は士官学校卒業祝い(?)模擬戦まっただ中
3日間も続くこの戦いは、支給された銃(睡眠弾)で行われている
ルールは簡単

・2人1組のペアで行動
・支給された銃・弾以外での攻撃禁止
・2人が倒れた時点で脱落
・終了は全員が脱落するかまたは4日目の日の出まで

こんな感じ
まぁ至って普通の模擬戦
練習なのだからみんな手を抜いてさっさと終わらせればいいのに・・・・・

約2名が本気を出しているからたまったもんじゃない
こっちの迷惑も考えろ
勝ち残ったからと言って何の得にもならないこの戦い
それでも力が有り余っているのかあのバカ共は大いに楽しんでいる
くだらない

でも使用されている弾がマッドサイエンティスト高松仕様
当たったら最後ドクターに解毒薬を投与されるまで眠り続けるという恐ろしいものだった
こんな場所でのんきに寝こけるなんて絶対にごめんだ
寝ているうちに誰に何をされるか・・・考えただけでもぞっとする
同期はミヤギくんしか信用していない
後、絶対に馬鹿なことをしないという点ではコージ
シンタローとあれは自分たちに精一杯でこちらのことなど気にもとめていないだろう

とにかく自分の身を守るために負けるわけにはいかない
僕が頑張って生き残っているのはそれが理由

見張りに飽きたのかミヤギくんはその場に座り込み深いため息をついた



「あーったぐ!シンタローとアラシヤマを組ませるのは反則だべ!!」
「あそこが勝つに決まってるっちゃね」



あの教官はとにもかくにも成績トップのシンタローとNo.2のアラシヤマを組ませたがるのだ
それはシンタローのご機嫌取りなのか、その方が成績がいいからなのか定かではない

ミヤギくんの隣からこっそりと外を覗いてみると、そこにはまさしく戦場の光景が広がっていた
そこら中に倒れて寝ている同期たち
これが戦場だと全てが死体になる
辺りには硝煙の臭いが立ちこめ、張り詰めた空気が肌を通して伝わってきた
本物はこれの比ではないのだ
生か死か
あの場にはそれしかない
それが普通だと思っていたから今更何の感動もないけれど

それより残りは何組だろう?
シンタローとアラシヤマのところは確実に残っているとして・・・・
そう考えていると外から誰かの話す声が聞こえる



「オマエ今何人だ?」
「18」
「俺は20。このままじゃ賭は俺の勝ちだな」
「うっさいわ!まだ残っとるとこあるやろ」
「それが3人以上とは限らねーけど」
「なに言うとんの。引き分けやったら無効や」
「はぁ!?」



大声でまたもやケンカしているのは本気を出している迷惑な2人
ふと気がつくと彼らの後ろから1人迫っていた
そして反対側にはもう1人が隠れて狙っている
僕たちは建物の2階に隠れて外の様子を伺っていたから、位置的に何をしているのかよく見えた

それに気づいたミヤギくんも体制を低くして外を見る



「あいつらオラ達が見つかんねがらってシンタロー達ば狙う気が?」
「だらずだっちゃ。とっくに気づかれとるのも知らんけ」
「んだな。あぁー・・・オラ達も加勢してみっか?」
「意味ないっちゃよ」



加勢した所で結果は目に見えている
本気でかかればやれないこともないが無駄に疲れたくはない

そんなくだらないことを話している内にシンタローとアラシヤマが向かい合って本格的に罵り合い始めた
本当に言い争いしているように見えるが、あいつらは戦闘になると人が変わったようにコンビネーションがよくなる
だからうかつに近づく方が危険

シンタローがアラシヤマに
アラシヤマがシンタローに
銃口を向ける

きっと言い争っていた時点で敵の位置は確認済み
銃声と共に人が倒れる音が2つ
ほら、やっぱり



「これで19と21」
「まだいるんとちゃう?」
「んー?そういやぁミヤギとトットリ見てねぇな」



しっかりとばれている
こうなったら覚悟を決めるしかないのだろうか?



「よっし!いくぞトットリ!!!」
「あ!ミヤギくん待ってっちゃ」



正々堂々と飛び出していったミヤギくんを追う
結果は見えてるけど、最後だし頑張ろうか??
いつでも一生懸命なミヤギくんのために

模擬戦4日目
午前4時30分
僕は手にした銃を握り直した











++++++++後書き++++++++
久しぶりのミヤトリ
ミヤギくんがどこまでもいい子w
トットリにどんどん陰が出てくるよ★
忍者の修行は厳しいものばかりだっただろうし
結構大人だと思うます


実は互いに銃を向けるシンアラを書きたかっただけだったり←
シンタローとアラシヤマが何を賭けているのかはまた別のお話