空の川


笹の葉に
願いを書いた短冊をつけて
僕の小さな願いを
叶えてもらえるように




7月7日
この日商店街は七夕の笹と人で埋め尽くされていた。
そんな中菊丸英二は恋人の不二周助と共に商店街に来ていた。
英二の目的はもちろん夜店である。


「不二、早く早く!」


もともとお祭りなどにぎやかなことが好きな英二は早くもはしゃいでいる。
そんな様子を見て不二はクスクス笑った。


「英二、楽しむのはいいけどあんまり急ぐと転んじゃうよ?」


いいじゃん!と英二は頬を膨らませる。
不二は薄いベージュ、英二は濃紺の浴衣を着ていた。
街には浴衣を着た人が多く2人もせっかくだからと着ることにしたのだった。


「不二先輩、菊丸先輩!」


後ろから聞こえてきたのはよく知っている声。
振り返ると浴衣を着た越前と・・・


「手塚!?」

「君も来ていたんだ」


あぁと手塚は腕を組んだ越前は青地に薄い黄色のストライプが入った浴衣で手塚は落ち着いた色の格子模様だった
手塚と越前がつきあってるのは知っていたがまさかにぎやかなところに来るとは思っても見なかった。


「あんたたちも噂聞いて来たんすか?」


噂?
不二と英二は同時に疑問に思った。
噂は聞いていない。
なんの噂かも知らなかった。


「知らないんだ、この先にある笹に短冊をつけると本当に叶うっていう噂」


願いが叶う!?
英二は目を輝かせた。
そんな訳ないよ・・・と不二はあからさまに信じていない表情だった。
手塚も同じ様なことを思っているらしい。


「俺たちもう行ってきたんで」

「またな」


そう言うと手塚と越前は人混みに消えていった。
あの堅物を連れていけたのか・・・
英二は越前をちょっと尊敬した。
しばらく立ち止まっていたが不二が英二の手を握り行ってみる?と聞く。


「当たり前だろ!!」


2人は急ぎ足でその場所に向かった。




噂は結構有名らしく何人もの人がいた。
その人だかりの真ん中には2本の笹がある。
笹にはプレートがかかっていて織り姫笹と彦星笹と書いてあった。


「織り姫と彦星って悲恋じゃなかったっけ?」


英二は首を傾げる。
待ってまだ何か書いてあると言うと不二は続きを読み始めた。


「『男性が彦星笹に女性が織り姫笹に短冊をつけるとそのカップルの願いを織り姫様と彦星様が叶えてくれる』だって」


あからさまに嘘っぽい
不二はそう思ったが英二は違ったようだ、いつの間にか隣にいない。
探してみると2枚の短冊を持ってきて一枚を不二に渡した。


「早く書こ」


あまりにも可愛い笑顔だったので信じていない不二もつい頷いてしまった。
(願い・・・)
不二は考えた
テニスは自分で何とかするし、これと言って欲しい物もない。
(あ・・・)
一つだけ浮かんだ願いを不二は短冊に書き込んだ。



「ねー、不二はなんて書いたの?」

「教えたら叶わなくなるんじゃない?」

「でも知りたいしさ・・・」


さっきから同じ会話を繰り返している2人は自然と人のいない近くの丘に向かっていた。
丘には人が全くおらず2人きりだった。


「だいぶ涼しくなってきたね」


浴衣を通り抜ける風が心地よい。
少し座らない?
不二の提案に英二は笑顔で答えた
不二の隣に座ると英二は小さくキレイ・・・と呟く
丘の下には街が広がっており街灯や民家の明かりが天の川のように光り輝いていた。


「また、来年も一緒に来ようね?」


約束するよ
不二は微笑むと英二に口付けた。




芝生の上に寝ころんだ英二が突然声をあげた。


「不二、上見て!」


英二に言われるがまま不二が空を見上げると


「天の川・・・ここからでも見えたんだね」


空の川と街の川が鏡で映したようになっていた。

(君のおかげで僕は見つけられたよ)

下ばかり見ていた、ただ英二に着いてきただけだった不二に大切なことを思い出させてくれた英二
織り姫もこんな人だったのだろうか・・・?


「ね、やっぱ知りたい。不二の願い事」


空を見ていた英二が身体を横にして不二を見る

(そうだな・・・)

不二は条件を出した、英二の願い事も教えて欲しいと


「俺はね・・・不二といつか離れてしまっても、俺がいつまでも不二を好きでいられますように・・・って書いたんだ」


照れたのか顔を赤らめる英二
不二はつい吹き出してしまった
笑われたことにショックを受けた英二に違うよと不二は頭を撫でた
不二の願いもまた英二と同じだった
そのことを伝えると英二もクスクスと笑う。





大丈夫


君とならきっといつまでも


この恋を続けていけるよ









+++++++++後書き++++++++
1日遅れてしまいましたι
困った困ったι
次は塚リョですね〜
頑張りますっ





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