猫の放課後
菊丸英二が歌う童謡集【ねこふんじゃった】を聞いてから読むことをお勧めします
タン・・・
ピアノの音が完全に消える頃パチパチ・・・と背後から誰かの拍手が聞こえてきた
鰹節を食べ終えて満足げなカルピンを抱き上げ後ろを振り向く
そこには柔らかな笑みを浮かべた不二がいた
どうやら歌を聴いていたらしい
「いつからいたんだよ不二」
「カルピンに鰹節あげてるときくらいかな?」
「うぅ・・・声かけてくれればよかったのにぃ」
「ふふっ・・・ずいぶん楽しそうに歌ってたからね、つい声かけそびれちゃって。上手だったよ」
クスリと笑う不二
そりゃ楽しかったけどさぁ
誰もいない放課後の音楽室
ねこふんじゃった弾きながら歌ってるのを黙って見てるなんて・・・
不二って悪趣味?
つかすっげー意地悪
ぜってー俺が恥ずかしがるの分かってて黙って見てたんだ
はぁ・・・・後でこれをネタにどんだけからかわれるんだろ
想像してちょっと泣きたくなった
「ほあらー」
「あ!カルピン!?」
抱きしめていたカルピンが俺の腕をすり抜けて廊下へと駆け出す
あーあ、行っちゃった
飼い主は今部活中のはずだから匂いをたどってテニスコートの方に行ったのかな?
猫を溺愛してる彼だからきっと練習もそっちのけで駆け寄ってしまうだろう
そしてその飼い主を溺愛している部長は軽く注意をするだけのはず
ったく、俺がやったらグラウンド何周させられることやら
贔屓だ贔屓
俺がちょっとよそ見してたり、不二とじゃれてるだけで怒るくせに
手塚は本当におチビに甘いよなっ
「英二、なに一人で百面相してるの」
「贔屓だよね!?」
「まず何の話か分からないんだけど」
何考えてたの?なんて不二はクスクス笑い続けた
あー・・・・またやっちゃったよ
これ以上不二にからかわれるネタを提供してどうする!!
・・・・・もう黙ってよ
「一緒に歌ってたんだね。カルピン楽しそうに鳴いてたし」
「ふっふーん。俺のねこふんじゃったが上手だったからだよん」
「僕も弾いてみようかな・・・」
不二の綺麗な指が鍵盤を叩くとポロン・・・と小さな音が零れる
不二ってピアノ弾けるっけ?
なんか何でもできそうなイメージだからなぁ
普通に弾けそう
「弾けないんだけどね」
「えー!?」
「弾けると思ったの?」
「・・・思ってにゃい」
「嘘つき」
一瞬の隙を突かれてふわりと不二の唇が触れた
羽のように軽く
でも確かに触れたという感触を生々しく残して
一気に顔が熱くなった
し・・・・信じらんない!
いくら誰もいないからってこんなところでキスするとか!
キッと不二を睨み付けると、ムカツクことに小首をかしげてた
「なぁに?」
「何じゃにゃい!!おまっ・・いきなり!!」
「ねぇ英二。僕の猫はどんな声で鳴いてくれるかな」
不二がうっとりとした表情で俺の頬に触れる
ものすっごい話そらされたんですけど!!
ふんっ、簡単にごまかされないかんな
不二は猫飼ってないの知ってるし
こうなったらとことん追求してやるっ
「不二は猫なんか飼ってないだろ。それより!何で」
「いるじゃない。ここに」
「は?」
右見て
左見て
下見て
振り返る
猫どころか俺たち以外には誰もいない
?????
どういうこと???
正面に向き直るとなぜか目の前に不二の笑顔があった
しかも不自然なくらい近い
「英二っていう名前の猫」
「・・・・っ!?」
しまった!と思ってももう遅かった
元々近かった顔がもっと近づいて唇が重なる
すぐに引き離そうとして肩を押したけど、不二はクスリと笑うだけで全然効果がなかった
ヤバイ!ヤバイ!!
すっごくヤバイ!
早く何とかしないと不二が暴走する!!!
どうやったらこの状況を抜け出せるか考えたいのに
口の中に入り込んできた不二の舌が邪魔して、だんだん何も考えられなくなっていく
「はっ・・・・ん・・・・んん」
ピアノの音にかわって俺の吐息とぴちゃぴちゃという密かな水音が音楽室に響く
「ぅ・・・んん・・・ふっ・・・は」
やっと不二の唇が離れた
気が済んだのかな・・・・?
離れないとまたなにかされるかもしれないのに
今の俺にはキスで乱された息とうるさいくらい鳴り響く心臓を落ち着かせるのが精一杯だった
不意にさらりと不二の髪が俺の頬に触れて
ゆるめていた学ランからのぞく首に舌が這わされた
「ちょっ、不二!?や・・・う・・・あ」
「まだ鳴いてないでしょ?僕の猫は」
「俺猫じゃ・・・にゃい・・・・し・・・」
そう?なんて首をかしげてくる不二がものすごくムカツクのに全然抵抗できなくて
それどころかゾクゾクと這い上がってくる知っている感覚に焦りが増す
「あ・・・や不二・・・・・・ふぁっ!」
いつもの俺では絶対に出ないような高い声が出て慌てて口を閉じる
恐る恐る視線を落とすと満面の笑みを浮かべた不二と目が合ってしまった
「可愛く鳴けたね、英二」
「っ〜!!バカ不二」
「はいはい」
せっかくねこふんじゃった弾けるようになったのに
またしばらく弾けなくなりそうだ・・・・
++++++++後書き++++++++
HappyBirthday英二vv
全然関係なくてマジ申し訳ない
このお話は菊丸英二が歌う童謡集【ねこふんじゃった】を聞いていて思いついたお話
日直で遅くなる不二を待っている間に音楽室でピアノを弾いていたのかなぁと
それなら絶対不二は陰で聞いているだろうと!!!
そんな妄想から生まれました
ねこふんじゃったの歌詞を全く絡められなかったのはちょっと残念(力不足
楽しんで書けたのでよかったです^^