君の痕




女のいないガンマ団には顔の綺麗な奴を代用品にする、という風習のようなものがある

アラシヤマも根暗だが顔はいいということもあり対象になることは避けられなかった
だが、生まれ持った能力と幼い頃から師匠に叩き込まれた戦闘技術は飛び抜けて高い
ソレ目的で近づいてきた奴らをことごとく半殺しにしていったため、一年間の謹慎が終わり3ヶ月も経つ頃には手を出そうと考える命知らずは消えていった

同時に友達も皆無だったがもう諦めている

誰もがアラシヤマを避けるような状況で1人だけしつこく関わろうとしてくる命知らずがいた
そしてそいつは1番嫌っている相手で決まって夜しか話しかけてこない
そこがまた嫌いな要因となっている





コンコンと無音だった部屋に扉の鳴る音が大きく響く
消灯時間も既に過ぎているにもかかわらず自室から抜け出し、アラシヤマが1人で使っている2人部屋に訪ねてくるのはあいつしかいない


「よ」
「・・・・・・・・」


ドアを開けるとそこには予想通りの見知った顔
シンタローの姿があった
追い返したい、という衝動に駆られたが扉を閉めた瞬間蹴破りかねない
前回そのせいで真夜中によけいな騒ぎを起こし罪をなすりつけられたのだ
そのことを含め考えるとここはやはりおとなしく従っておいた方が得策といえる
思いっきり嫌な顔をしてやって渋々招き入れた


「んだよ、せっかく来てやったのに」
「別に来いなんて言うてへんわ」


無視していたのが気にくわなかったのか不満を零すシンタロー
こっちは望んでいないのだからそんな態度に出られても困る
迷惑を顧みず毎日のように来ているからこの会話もすでに日常と化してしまった





シンタローがここを訪れている理由はただ一つ
自分を代用品にするためだ
少なくともアラシヤマはこの関係が始まった時からそう認識している

そんなものにならないために周りを燃やし続けてきたのだが、今となっては無駄な努力
シンタローはアラシヤマより強い
ただその事実のみがこの関係の有無を決めていた

自分より顔の綺麗な男はたくさんいる
なのになぜシンタローが自分を選ぶのかアラシヤマには理解出来ない


「違う奴んとこ行けばええんや。総帥の息子に抱かれたい言う物好きはぎょうさんおるやろ」
「じゃーお前もその物好きだな」
「誰がやて・・・・?」
「俺に抱かれて悦んでいるお前」
「・・・・・いっぺんドクターに診てもろたほうがええな」


怒りからかアラシヤマの背後で陽炎が揺れ部屋の温度が上がった
勘違いをしている
元々アラシヤマにはそっちのけは一切ない
致し方なく・・・・・と言う言葉を知らないのだろうか?

当のシンタローはどこ吹く風でよけいに腹が立つ
その証拠に腰に手が回っていた

まずい
この早急さは間違いなく朝まで付き合わされるパターンだ


「ちょっ待ち・・・明日の任務知っとるんやろ」
「まぁな」
「・・・やめようとか思わへんの」
「全然」


浮かべる笑顔の爽やかさに本気で焼き殺そうかと考えた

士官学校生なのに任務を任されるのはとても名誉なことだ
それだけ認められ、信用されている
たとえそれがどんな内容だとしても

任されるのは初めてではなく、これまでも何度か敵地に潜り込み情報収集をするなど危険な任務もあった
今回は王に取り入って暗殺を行う任務のため求められていることもだいたい想像が付く

極秘任務にも関わらずシンタローがこのことを知っているのは父親の資料を盗み見ているからだろう
絶対に気がついていると思うのになぜかやめさせようとしない
どこまでも息子に甘い父親だと心の中で幾度罵倒したことか
とにかく知っているなら勘弁して欲しかった


「親父も何でお前を使うんだろうナ・・・」
「いざとなったら情報が漏れる前に死ねいうことやないの」


当たらずしも遠からず
そんなところだろう

シンタローには関係ないはずなのに眉間にしわを寄せて小さく舌打ちをしている
アラシヤマにはその意味が分からなかった
分かった所で今の関係が何ら変化するとは思わないが・・・・


シンタローの腕から抜け出して距離をとろうとするが先読みされ回されていたらしく、手に力が込められ身動きが取れなくなる


「離し。俺はもう寝る」
「ちょっとくらいつきあえ」
「お前のちょっとは信用できん」
「冷てー」


非難の言葉を口にしながら楽しそうだ
こうなると何を言ってもシンタローを楽しませるだけになる
彼曰く抵抗されたらますます燃えるのが男というものらしい
同性だが理解できない理屈だ

それに約束するとは言うが口先だけで、結局最後までつきあわされるのが目に見えている
こいつが少しで終わるわけがない

はっきり言えばいいんだと思う
もうやめてくれと
本気で拒絶すれば・・・・実際に嫌なのだが、そうなればきっとシンタローも身を引く

それでもその一言を告げられないのはなぜだろう
拒みきれず従ってしまうのは自分も性欲処理として利用しているからなのだろうか

答えのでない問いは不意に落とされたキスによって頭の端に追いやられてしまった
心地よさに流されればこの身体は持ち主の意志など関せず彼の意のままになる


「な・・・いいだろ?」


少し唇が離れて吐息で確認してきた
まだ余裕があると言っているようで悔しい
言葉で伝えるのは癪に障ったためアラシヤマは返事の代わりに唇を自らの重ねる

それを了承ととったシンタローはアラシヤマをベッドに組み敷くと、慣れた手つきで服を脱がせ白い肌に指を滑らせていった


















アラシヤマにとってシンタローは常に対等でありたい、もしくは上を行きたいと思うライバルだ
それ故自分が負けている・・・・というかシンタローよりも下にいることが不満だった

もちろん今も例外ではない
いいようにされるしかない自分が口惜しく、それでもとうてい勝ち目のない立場に苛立つ
声を上げないように唇をかみしめ耐えることが精一杯の抵抗だった


「はっ・・・ん・・・んんっ」
「お前さ」
「んぅ・・・・」


執拗に胸の飾りを舌で転がしていたシンタローが顔を上げる
中途半端な状態で刺激がやんだため思わずもの足りなさ気な声が上がりかけ、慌てて口を噤む
それを知ってか知らずか、シンタローは唾液でぬるつくそこを爪の先でひっかきながら話しかけてくる
くすっぐったいような何ともいえない感覚は、アラシヤマを苦しめた


「何でそんなに声我慢すんだ」
「っ・・・・関係・・・・ないやろ」
「でもよ」
「ひぁっ!?」


弱い刺激を繰り返すだけだった爪をいきなり立てられあられもない声が上がる
会話をしていて唇を噛んでいなかったからだ
羞恥に耐えている様子を見ていい声とシンタローは満足げに笑う


「声出したらもっと気持ちよくなるかもしんねーぞ」
「お断りさせていただくわ」


もったいないとしきりに呟くシンタローを無視してアラシヤマは気づかれないように下肢に手を伸ばす
与えられていた刺激のせいで限界が近いのが分かる
イかせてくれ・・・なんて頼めるはずがない、そのためさっさと自分で処理してしまおうとした

だがそれを見逃してやるほどシンタローも優しくない
伸ばされた手を掴みそのままアラシヤマの頭の上に押さえつける
もちろん暴れはしたが抵抗とは呼べないような弱々しい力だった


「もう我慢できねぇの?」
「うっさいわ・・・・・」
「そんくらい言えんならまだ大丈夫だろ」


そう言うとシンタローはまた尖りへの愛撫を再開した
先ほどとは違い強弱をつけながら舌を使われると、ギリギリの状態で耐えていたのだから限界だ
せり上がってくるような衝動を抑えきれずアラシヤマは強く唇を噛んだ


「んんんっ・・・・!」


ひくりと痙攣した自身から白濁が吐き出される
シンタローは上体を起こし息の荒いアラシヤマを見下ろした
すぐに顔を逸らしたがシンタローの視線がより強く感じられ悪循環だ


「オマエイくなら言えよ・・・・ったく、素直じゃねー」
「元々こういう性格や」
「ま、これで終わるとは思ってねーよなぁ」
「は・・・・」


枕元の引き出しから何かを探すような音がしたかと思うとシンタローの手にはローションのチューブが握られていた

いつの頃からか常備されるようになったそれはこの不毛な関係の長さを感じさせ悲しい
どこから手に入れてくるのかアラシヤマは知らないが、何度拒否してみてもシンタローは使うのをやめなかった
任務でも使うようになってしまったこの行為にはそんなもの今更としか言いようがないだろうに

何はともあれ前戯と達したことによって疲弊した身体は休養を求めている
重くなった瞼が完全に閉じきってしまう直前耳元で囁く声が釘を差してきた


「まだ寝んなよ・・・お前だけじゃ不公平だろ」


その言葉と同時に内腿に熱を押し当てられる
熱さと質量に驚いて動きが止まった隙を突いてシンタローは後口にローションを多量に塗り込む
冷たさとぬるついた感触に腰を引こうとしたが指を突き立てられ息を詰めた
アラシヤマに抵抗の気がないことを悟ったシンタローは押さえつけていた手を離す
解放を許された手はすぐに快感を耐えるためにシーツをたぐり寄せ握りしめた
指先が少しずつ奥へと進み中を無遠慮にかき回していく、その度にローションのぐちゅぐちゅという音が耳からもアラシヤマを犯していく


「はっ・・・・やめ・・・・っく」


制止の声が聞こえているだろうにシンタローは完全に訴えを無視し指を一本ずつ増やす
達したばかりの自身もすでに頭をもたげ先走りを溢れさせていた
ローションと先走りが混ざりさらに凄い音をたてアラシヤマを苛んだ


「すっげぇ音・・・興奮してんだ」
「・・・・・・・・・っぅ・・・ ・・・・・」


からかうような声に反論したかったが、今口を開いたらきっとあられもない声が上がる
反論しつつ声を抑えられるほど今のアラシヤマには余裕がない

そしてシンタローの指がある一点を掠めたとき、あっさり高い嬌声があがった


「ふあぁっ!・・・・・・っ」
「ここがいいんだっけ」
「触ん・・・なっ・・ぁ・・・」
「つったってナ・・・・ま、いいケド」


中を散々荒らしていた指が抜かれ代わりにシンタロー自身が後口に宛がわれる
何度経験しても中々慣れることができない微妙な緊張感にアラシヤマは身体を硬くした
それに気がついたシンタローは優しく口付ける
アラシヤマを安心させるような、そんなキスだ


「名前」
「え・・・?」
「呼べよ」
「わけ分から「アラシヤマ」
「っ!」


耳元で囁かれる名前は淫蕩な響きを持ち、アラシヤマに残っていたわずかな理性さえ少しずつ溶かしていくようだった
優しげな声をかけるなんて昼間は絶対にしないくせ、2人になると嘘みたいに甘く優しい
優しくされることに慣れていないから流されてしまうのだ
救いようがないことなど初めから分かっている
半ば自嘲気味に笑うとアラシヤマは名前を口にした


「・・・・シン・・・タロー・・・」
「よく言えました・・・いれるぞ」
「っ・・・あぁっ・・・!」


ご褒美だとでも言うようにシンタローがアラシヤマを貫く
指とは比べものにならないほどの質量に息が止まりかけるが十分に解されたそこはあっさりと
むしろ待ち構えていたかのように口を開き昂りを飲み込んでしまう
強い締め付けにシンタローは一瞬眉間にしわを寄せたがすぐに律動を開始する
シーツを固く握り締めて快感に耐えていたはずの手はいつの間にかシンタローの背中に回され、縋りついていた


「ふ・・・あ・・・はっ、ん!くっ・・・ぅぁ」
「あんま・・・締めんなっ・・・」
「あぁっ!あ、あっ」


シンタローの声はちゃんと聞こえていたがアラシヤマが返事をすることはなかった
熱くて全て溶かされてしまいそうな熱量

つながっている部分を指でなぞられるとその刺激に後口は中の締め付けをより強くする
そこを無理矢理引き抜かれすぐに最奥へと突き入れれば、閉じられた唇からは自分のものとは思えない様な甘ったるく高い声が漏れた


「あぁぁっ・・・は・・・あ・・・や」
「嫌なわけねぇだろ・・・。こっちもこんなにしてるし」
「さわっ・・・ひぁっ!」


中を激しく抉りながらシンタローは絶えず雫を零す自身を握り込んだ
触れられることに飢えていたそれは与えられる刺激を全て頭が真っ白になりそうな快感に変えてしまう

嫌だとか、負けたくないとか、そういう感情を無視してただやめないで欲しいと思った
代用でもなんでもいい
ただ今は気がついてしまいそうなこの不可解な気持ちに蓋をしてこの感覚に溺れたかった
誰に抱かれるときにも感じることのない泣きたくなるようなそんな感情が
なぜシンタローに抱かれると溢れ出すのだろう



とうの昔に捨てたはず
人を好きになってしまいそうな
信じようとする・・・ココロ





「んっ・・くぅ・・・も、無理っ・・・イ・・・」
「もう少し我慢しとけ」
「やぁっ!」


限界にも関わらずシンタローは解放を許さないかのように根本を強く握り込む
そのまま激しく揺すぶられアラシヤマはただ体内で暴れ回る快感を持て余し、喘 ぐことしかできない
苦しくて、解放されたくて、
それに反して身体は快楽を享受し尚も求め続けた

しかしどれだけ追い詰められても、ねだるなんて理性が飛んだ今もアラシヤマが口にすることはない
そしてお互いに好きだと言うことも
越えてはならない一線
なんとなくだがそう感じていた


「ふぁっ!!・・・シンタロっ・・・あっ・・く・・・シンタロー・・あかんっ 」
「な・・・このまま中に出していいか?」
「はぁ・・・あっ・・・こ・・・ろす」
「あーはいはい」
「ひゃあっ・・・出っ・・・あぁぁぁっ!」
「っ・・・」


びくびくと背中を撓らせてアラシヤマは白濁を飛び散らせる
その締め付けでシンタローもアラシヤマの中に精を放った
抜き挿しし全てを注ぎ込んだ後、シンタローは自身を抜く

中に出したら殺す、と警告したはずだがどうやら聞いていなかったようだ
その上すっきりしたような顔でぬけぬけと言う


「わり、間に合わなかった」

「・・・・わざとやろ」
「んだよ、最大限の努力はしてやっただろ?文句言ってんじゃねーよ」


ケラケラと笑いながら、名残惜しそうに身体のあちこちを唇でなぞっているシンタロー
嫌な予感がした
時折、悪戯なんだか嫌がらせなんだか団服から見えない場所に痕を残すことがある
普段なら言ってもどうせ聞きはしないのだから、何も言わないが今日ばかりは事情が違う


「痕・・・つけたらしょうちせえへん」
「分かってるっつうの」


いいから寝とけと布団をかぶせてくるシンタロー
どこか不器用な優しさに戸惑いつつ心地よい眠気の波に身を任せ目を閉じた






























「おーい。アラシヤマ、起きなくて大丈夫なのか」
「ん・・・・・シンタロー・・・・・?今・・・何時」
「んーと、7時かな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?}


眠そうな目をこすりながらぼーっとしていたアラシヤマだったが時間を聞き飛び起きる
出発予定時間は午前9時
今から準備して終わるのはギリギリだ

昨夜の行為でべたつく身体を洗うために、慌ただしく洗面用具を準備し始めるアラシヤマ
そんな姿をシンタローはベッドから半身だけ起こしなんとなく眺めていた


(寝起きとか可愛いんだけどナ)


先ほどのような気を抜いているときや、ふとした瞬間に見せる仕草は優雅というか品さえ漂う
そして見とれてしまうような色気も
だがしかし・・・・


「出てくときそこ片付けとき。俺が帰ってきてもこのままやったら焼き殺したるわ」


本気の目をして睨み付けアラシヤマは部屋を出てシャワー室へと行ってしまった

そう、これだけが何とももったいない
殺気を漲らせている表情も綺麗だと思うが違う・・・できれば笑顔とか見てみたい気もする









その願いが叶うのは
そう遠くない未来

その時のシンタローは知るよしもない








++++++++後書き++++++++
ずっと書きたかった士官学校シンアラ
えっちも殺伐としてたに違いない!!!!
と思ったです
でも士官学校ってどこまでやっていいか分からなくてすっごく悩んで相談までした覚えがありますww
あれだよ、今の若い子は進んでるからどこまででも大丈夫だよ!!!
とアドバイスをくれた夏瀬さん!!!
ですよねーww
ありがとうございましたvv

肉体関係はあったけど好きではなかったアラシヤマ
気に入らないけどすっごく気になっているシンタロー

士官学校の2人はそんな感じのイメージがあります
そしてアラシヤマって人を恋愛感情的に好きになると言うか信じることがとても苦手だったと思いますた
師匠と山暮らしでしたからね

シンタローとアラシヤマ

自分の気持ちに気がつくのは
もう少しだけ先の話