大嫌いと囁いて、
昔、目があっただけで大げんかになるほど仲が悪かった。
あの不思議な島に行ってからも彼は脱走者、自分は刺客、相容れない関係で
友達と呼ばれ、共に戦うようになってから「大好き」なんて言い始めた。
こんな自分に価値を見いだしてくれたから
たった一人だけ必要としてくれたから
例えそれが嘘だったとしても
南国から帰還した後、彼は自らの意志でガンマ団総帥を継いだ
新総帥直属の部下、通称伊達衆に含まれていたことを知り、とても嬉しかったことを今でも鮮明に思い出すことができる
彼の役に立てるのであれば、命さえ捧げてもいいと本気で思えた
それなのに
特戦部隊との戦闘で使った自爆技極炎舞の傷がようやく癒え、仕事に追われる忙しいが充実した毎日を過ごす中
何の気紛れか彼の要望で関係を持つこととなる
士官学校時代に何度かあったそれは、性欲処理のためにお互いを利用していたに過ぎないはず
とうの昔に卒業した今、なぜ代用品などにするのか。幾度となく聞こうとして、その度に聞けなかった
答えはどうであれ、聞いてしまえば危ういバランスで成り立っているこの関係は崩れてしまうだろう
彼にとって不要のものになる、そう思うと怖くてしかたがない
いつからだったろうか
「嫌い」以上に「好き」と思うようになったのは
そこに友情以上の感情を込めてしまうようになったのは
答えなど出せないことを知りつつ、思考を止めることができない
月がとても綺麗な夜だった
パプワ島を模して作られた第2のパプワ島
シンタローに会いに行き、いつものごとく眼魔砲で追い払われたアラシヤマは、吹き飛ばされた先の森の中で
ぼんやりと満天の星空に浮かぶ満月を見上げる
以前と何もかもが同じではないけれど、この島で見る月もそう悪くはない
不気味な程に静まりかえった森はアラシヤマにとって心地のいい空間だった
だからかもしれない、考えても仕方のないことがグルグルと頭を巡ってしまったのは。
士官学校時代から気になっていたのは確かだ。
特戦部隊のマーカーを師に持つ自分と互角に戦える相手など、シンタロー以外にいなかったのだから当然かもしれない。
そうあの頃は確かに大嫌い・・・だった。
愛してる、なんて一度たりとも口に出したことはない。
愛を伝えるよりも「嫌い」と言って予防線を張った方が、失った時の傷は浅くなるだろう
やるべき事があるから立ち止まっている暇はない、弱みを見せることなんてできない。特に彼には。
いや、彼の前だからこそ、誰よりも強くありたいと願うのだ
彼には守るべき存在が多いから。守られるのではなくて、背中を預けてもらえるような
そんな自分でいたい。
「何やってんの、オマエ」
「ひぃっ!!」
突然背後から声をかけられアラシヤマは飛び上がる程驚いた
全く気配がなかった・・・さすがガンマ団No.1と呼ばれた男
「シ、シンタローはん!?いつからそこにおったんどすか!?」
「ついさっきだよ。で、質問の答え」
めんどくさそうに答えたシンタローはアラシヤマの隣にどっかりと座り込んだ
何をやっていたのかと聞かれても、特に何もしてはいない
あえて言うならばシンタローのことを考えていたのだが、あらぬ誤解を招くと悪いのでとりあえずお月見と言ってごまかした
「こんな所で?うわー辛気くせぇ」
シンタローがうんざりしたようにため息をつく。
人のこと吹っ飛ばしておいてよくもまあぬけぬけとそんなことが言えるものだ。
「シンタローはんこそ夜のお散歩どすか?」
「いや、ちょうどオマエに会いに行くとこ」
普通ならここで嬉しおすーvvとか言って飛びつくだろう。ただしそれが昼間であれば
こんな夜更けに会いに来てくれる理由など、聞かずとも最初から分かっていた。
言われなくても分かってしまえるくらい、数え切れない夜を彼の側で過ごしているのだから。
「ほら、いつまでも寝てねぇでさっさと行くぞ」
「どこに?」
「とぼけても無駄だっつーの。それともちゃんと言って欲しいのか?」
「・・・結構どす」
やれやれと立ち上がり服に付いた土をはたき落とした瞬間、アラシヤマの頭をかすめたのは居候の顔
現在の住まい(といっても洞窟だが)には体調不良で寝込み、未だ起き上がることのできない壬生の狂犬がいる
庇い立てしてやる義理はないが、シンタローに浮気を疑われたくはない
もし斉藤と一緒に寝起きしていることが俺様総帥に露呈したら
『さすが淫乱。俺だけじゃ満足できなかったって事か?』
とか何とか言うのだ、絶対に
根っからのいじめっ子に餌を与えるとろくな事はない。これは感ではなく経験則だ
誓って何もしていないし、されてもいないと否定したところで、聞く耳を持ってもらえるはずもなく。
『確認してやるよ。今ここでナ』
なんて高らかに死刑宣告されるのは火を見るよりも明らか
最悪斉藤の目の前で公開プレイをする羽目になるだろう。想像するまでもなく却下だ。
それだけはなにがあろうとも絶対にごめん被りたい
ならばどうするか。選択肢は一つ
「あの・・・今日はやめておきませんか」
「はぁ?なんで」
途端にシンタローの声のトーンが下がった
まずい、このまま機嫌を損ねられたら間違いなくこの近距離で溜めなし眼魔砲がくるだろう。
だがこのまま家に行かれた方がさらに困る
公開プレイと眼魔砲を天秤に掛けたが一生忘れられなくなる恥ずかしい思い出よりは、いつか治る傷の方がまだましに思えた。
避けられるだろうか?いや、避けるしかない。ガンマ団のNo.2の意地を見せる時だ
アラシヤマが身構えているとシンタローが考えるそぶりを見せる
「もしかしてテヅカくん来てんのか?」
「そ、そうどす!せやから今日は・・・」
勘違いをしてくれて助かった、と胸をなで下ろすアラシヤマであったが
「じゃあ外しかないよなぁ」
明日の天気でも語るような軽い調子で彼の口から放たれた言葉は、決して聞き流していいようなものではなかった。
暗闇に包まれた夜の森を好き好んで出歩くものなどいないとは思うが、あくまでもここは屋外だ
不埒な行為を致していい場所ではないのに
(そこまでしてヤりたいんかこのエロ総帥!!)
心の中で罵ったところで目の前の俺様に届くことはない。もちろん口にも出せない
「さすがに外はちょっとどうかと思うんどすけど・・・いつ誰が通るか分からへんし」
「こんな夜中に出歩くナマモノ俺は知らねぇけど」
等という数分間の押し問答の末、背中が痛いからイヤだと言ったら手を引っ張られ
木の幹を背にしたシンタローにまたがる様な格好をさせられた
確かにこれならば背中は痛くない・・・
「他にご注文は?」
ニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべて見上げてくるシンタロー
やられた。もう何も言い返せないじゃないか
諦めたようにため息をついたアラシヤマは、せめてもの意趣返しとして自ら唇を合わせた
上着は捲り上げただけ、下は抵抗する間も与えられず下着ごとはぎ取られてしまった
いくら獣道から外れた場所とは言え、いつ何時島の住人やナマモノが通るとも限らないのに
触れられたところから熱が生まれ全身へと広がりアラシヤマを蝕んだ。
「んん、ふ・・・んぅっ!」
必死に上着の裾を噛み締めて荒くなる吐息を殺そうとしても、その度に刺激の強いところばかり狙われ
みっともなく上ずった声が漏れだしてしまう。
非難の意を込めて目の前の男を睨みつけても、無駄な抵抗とばかりに喉の奥で低く笑うだけで愛撫が止むことはなかった
月明かりに照らされ浮かび上がる、南の島にいるのに全く焼けていない白い肌が淡く色づき
色素の薄い胸の飾りは色味を濃くして触れてくださいとばかりに存在を主張している
望み通りに舌先で押しつぶせばくっとアラシヤマが息を詰めた
(相変わらず感度いい)
己の与えた羞恥と快楽で染まっていく様はどうしようもなく劣情を煽ったが、シンタローは今すぐにでも貪ってしまいたいという衝動を理性で押さえ込んだ。
抱くだけならば、誰にだってできる。
でもやたらプライドが高い孤高の根暗に欲しいと言わせられるのはきっと自分だけ
暗い優越感、異常なまでの独占欲と執着心は共に過ごせば過ごすほど強くなっていて、いつの日かアラシヤマを飲み込んでしまうんじゃないだろうかと思う時がある。
どれほど願ってもそんなことできはしないのに。
唾液をたっぷりと纏わせた舌で片側を満足のいくまで育て上げると、もう片方にも同じように愛撫を施す
ちらりと上目遣いで見上げてくるシンタローの目にはだらしなく溶けた自分の顔が映っていて、いたたまれず瞳を閉じたが感覚が鋭くなり余計に恥ずかしさが増しただけだ
不意にシンタローが充血し尖った飾りに歯を立てた。
「ぁっ!?」
過敏に反応したアラシヤマの身体がビクリと跳ね、意図せずシンタローの腹に立ち上がり硬くなったものがすり付けられる
人の悪い笑みを浮かべたシンタローの手はアラシヤマの引き締まった腹を辿り、足の付け根や太腿など際どいところをいやらしく撫でるが決して中心には触れようとしない。
煽られ高ぶった身体は蓄積された熱の解放を求めて暴れだし、アラシヤマの理性を少しずつ食い破っていく
シンタローの肩に置かれていた手を伸ばしたが、無情にも阻まれてしまった
「やぁ・・・!はな、して!!」
「ダメ。つか何勝手にイこうとしてんだ。んな早く終わらしちまったらつまんねぇだろ?」
もっと楽しませろと情事の時にしか使わないトーンで赤く染まった耳に吹き込まれたが、こっちはそれどころじゃない。
イきたい、出したい、でも胸だけでは決定打になり得ない。もっと確かで強い刺激が欲しい。
執拗なまでに内股と胸を弄り続けられ焦れたアラシヤマは、男の手に立ち上がり先走りを垂れ流す自身を擦り付ける
「ん、く、ああっ」
口から裾が外れ暗い森の中に艶めいた声が響き渡った
ここが屋外であることを思い出したものの襲い来る快感が強すぎて、思考は真っ白に染まったままだ
「自分の使えないからって俺の手使ってイくのかよ。さすが淫乱」
揶揄するように言われてもゆらゆらと揺らめく腰は止まらなかった。
ぐちゃぐちゃという恥ずかしい水音と熱を孕んで掠れた声は聞くに耐えず、耳を塞ごうとしでも、しがみついているのが精一杯で、それすらかなわない
深い紫色の瞳に涙を浮かべ、自ら腰を振るアラシヤマは壮絶な色気を放ち欲がずくりと疼く
もう少し長く楽しみたいという気持ちはあったが、恋人の痴態に煽られシンタローの我慢も限界に近い。
熱く滾った屹立をやんわり握り込んで、腰に合わせて扱いてやればアラシヤマは嬌声を上げ達した。
「シン・・・も、イくっ、ぁ、んぁぁ!」
勢いよく吐き出された白濁は腹と男の手を濡らし地面に滴り落ちていく
シンタローに身体を預け荒く息をついていると、後ろに無視できない刺激が与えられ思わず身体を強ばらせた。
精液を纏わせた長い指が胎内に進入し、柔らかいものへと作り替えようと蠢いたからだ
いつになく性急なシンタローにアラシヤマは慌てた。柔らかなベッドの上ならまだしも、今のような体位で休憩を挟まないのはさすがにつらい。
「シ、シンタローはん!?ちょっまだ、はっ、ぁ」
「とかなんとか言いながらしっかり感じてんじゃねーか」
嬉々として中を掻き回すシンタローがある一点を押すと、電流のような強い快感が背筋を駆け抜ける。
アラシヤマのものは再び鎌首を擡げとろとろと悦びの涙を流し、後ろも物足りないとでも言うように知らぬ間に三本も埋め込まれていた指をきつく締め付けた
受け入れる時の痛みも、異物感も慣れることはないけれど与えられた刺激は全て快感だと認識してしまう
認識してしまうように作り替えられた、と言っても過言ではない
ガチガチになったシンタロー自身を宛てがわれ、アラシヤマは襲ってくるであろう衝撃に備えた
だがなぜか彼は全く動こうとしない
「さて、どうしたい?アラシヤマ」
「なっ!?」
アラシヤマは思わず絶句した。拒絶すれば本当にここで行為を止めて放置されるだろう
彼も今更引き下がれるような状態ではないはずなのに、最後はアラシヤマに決めさせようというのだ
(こん男はッツ!)
彼が望むのは続きを強請る言葉だ。それを分かっていながら、口をついて出たのは悪態だった
「嫌い、どす」
「あーそーかよ」
「あんたは、いっつもそうや・・・狡くて、っあぁ!」
話の途中で望む答えが得られないと気がついたシンタローはアラシヤマの後孔に性器を深々と突き入れる
指とは比べものにならない程の質量と熱に襲われ、身体はガタガタと震えたが勃起したものは萎えることなくびくびくと脈打った
「キッツ・・・で、狡くて、っ、なんだって?」
「ひ、あ、あ、あっ・・・ずる、くて!」
ずるくて、意地悪で、自分勝手で。
それでも嫌いになれないなんて、とことん馬鹿な自分に腹が立つ
「好き」と等しいくらい彼のことが「嫌い」なのは、きっと「好き」だと口にしようとする度に、己の弱さに気付かされるからだ
いつ訪れるともしれない別れに怯え、ずっと側に居たいと駄々をこねる子供のような気持ちなんて悟られたくはないのに
それすら寄越せとでも言うようにシンタローはアラシヤマを求める
「なして・・・わて、なんか、相手に、するん!?」
例え利用するためだとしても、一度近づければしつこく後を追ってしまう事など勘のいい彼が気付かないはずがない
眼魔砲ではなく、自分を遠ざけるためのもっと確実な方法もあっただろうに
どうして中途半端につなぎ止めておくのか
「なにっ・・・甘いこと言ってんの?」
ニヤリと笑ったシンタローは、アラシヤマがさらに離れられなくなる呪文を耳元でそっと唱えた
「愛してるよ」
「っ、いらん、そんな・・・もん」
声を聞きたくない、顔を見たくない。これ以上甘い言葉をかけられたら、必要のないことまで言ってしまいそうだ
他の人間に、彼の妻となる女に、いつか明け渡さなければならないならば、そんなの睦言に過ぎない
簡単に信じてはいけないと理性が警鐘を鳴らしてもシンタローの眼差しが触れてくる手が余りにも優しくて
離れられないと、離れたくないのだと感情にまかせて口に出せればどれほど楽か
「ったく。素直じゃねー恋人を持つと、苦労すんな。オマエくらいだよ、俺をここまで手こずらせんのは」
「誰がっ・・・・んぅ」
恋人だ!と反論を口にしかけたが、言わせないとでもいうように唇を塞がれた
シンタローとのキスは嫌い。他の誰としたものより一番気持ちがいいから、もっと欲しいと思ってしまうから
舌を絡ませ合う深いキスは言葉にしていない想いまで伝えてしまえそうだ
「逃げてばっかりいねーでさっ、いい加減に、認めろよ。あいしてんだろ?俺のこと」
もちろんそんなことをサラッと言えるはずもなくて、大嫌いと呟くことでごまかした
彼はまた素直じゃねぇと愚痴をこぼしていたけれど
大嫌いと囁いて、大好きを伝えよう
いつの日かその目をちゃんと見て
『愛してる』と言えるまで
++++++++後書き++++++++
【WIND BREAKER】在原大雅様への捧げ物です。
お送りすると言いながらはや・・・・何年?
どんだけ時間かかってるんだっていう
在原さんすみませんでしたっUU
楽しんでいただけたらなによりです
今回も挑戦してみたい
・南国
・座位
・あおかん
をやってみました
実は南国のお話は初めてだったりします
青空じゃなくて夜空だけどね!
あんまり有効利用できなかったけどね・・・
中身の弁解はもうしません!
ネチネチシンちゃんが触っているのでやたら時間がかかった