赤い雨



その人は見たこともない異国の服を着ていた

深い藍色の服に真紅の長いスカーフ



その人は街で1番高い高台に立っていた

冷たく感情のこもっていない目で僕の住む街をただじっと見つめていた




----------何をしているの?




僕はその人に問いかけた

不思議だった



この街に自慢出来ることは一つもないことを

僕は知っていたから





ものと同じように売り買いされる人

高額で取引される麻薬

路地裏に横たわる死体

泣き叫ぶ声

響き渡る怒声

銃声



政府にすら見捨てられスラムと化している

僕が生きる街


誰もが犯罪者で

殺人者で

傍観者だ




僕は腐敗しきったこの街の高台にいる

盗むことも殺すこともなく

ただのうのうと生きている

すでに買われた身だから

明日朝一番にここではない街に行くのだろう




死ぬより辛い現実の中

僕はその人にあった




-----------お前は・・・?




その人は少しだけ考えるそぶりを見せた後、違うなと呟いた




-----------お兄さんは異国の人だよね




その人は少しだけ表情を柔らかくして僕の方を見た

何歳なのかは見た目では分からなかったけどだいぶ幼い顔をしている




-----------ここは・・・・牢屋?




鉄格子越しに話しているからそう思うのは無理もないけど




------------ここはね?店だよ




人を売る店

人を買う店


するとその人はいきなり僕の頭を撫でた


思わず

人に頭を撫でて貰うのはもう何年ぶりだろう

と考えてしまう

あまりにも温かい手

優しいぬくもり


こんなにも優しい人がこの街になんの用なのだろう




------------・・・・・・・・・・・・




その人は小さく僕に呟いた

今夜はここを動かないように

何があっても何を聞いても


絶対に

夜が明けるまでは



おかしな人だ

どうせ夜が明けたら

僕はここから離れなければいけないのに





あの人が去ってから数時間が経った頃

外から聞こえてきた音で目を覚ました



だんだんと意識がはっきりしてきて

その音が叫び声だとわかった

断末魔の悲鳴



あの人は無事だろうか?



ふと不安がよぎって鉄格子から顔を出した





そこには真っ赤な世界が広がっていた





あちこちに見たことがないほど死体があって

それでも目をこらしていると

あの人が昼間と同じ所にいた



すぐに声をかけたかった

無事だったんだ

言いたかったけど




その人の深い藍色の服は

スカーフと同じくらいに

真紅に染まっていた




--------無事みたいだっちゃね




穏やかに笑うその人は

きっとこの惨劇を引き起こしたのだろう


その瞳には

以前とは違いちゃんと感情がこもっていて

この人がどれだけ悲しんだかが

とてもよくわかった






あれからもう4年

血に染まった街からたった一人で逃げ出した僕は

新しい街で生きている




あの優しい殺戮者は

まだあんな悲しい顔をしているのだろうか?


それとも


安らぎを得て

僕に見せた

あの優しい笑顔を

浮かべているだろうか?







++++++++後書き++++++++
ビバ突発w
南国時代ミヤギに会う前でパプワ島に行く前のトットリ
きっと弱い子なんだよ!!!(は?

突発ですが楽しんで頂けたら光栄ですv