愛しの嘘つき
“心友”
それは嘘
騙されているのは知っていた
だけど
“愛してる”
それは真実?
囁かれた言葉だけでも信じていたかった
できるならば
知らずに生きて
最後の最後まで
騙されたまま
幸せに
カツカツと静かな廊下を靴が踏む音だけが聞こえる
わてはシンタローはんが今朝部屋を出るときに忘れていったライターと新しい書類を届けるために総帥室へと足を進めていた
シンタローはんたらそそっかしいんやから・・・・
のうなって困るんは自分やのに
それに忘れていきましたえ?と伝えれば、さも当然のように持ってこいて言わはるんやろなぁ
ったく、昨日シンタローはんに好き勝手されたせいでまだ身体の節々が軋むし
嫌みの一つも言いたくなるわ
やっぱし最近シンタローはん疲れてるんやろか?
自分の快感のみを追う一方的なセックスは受け入れる側としては負担が大きくて辛い
まぁ連日の会議でストレス溜まってるんやろ
せやからわてが精一杯優しくせなあきまへんな
総帥室前
入室のため一応手順は踏まなあかんから秘書室にいるチョコレートロマンスとティラミスを捜したんけど・・・・
おらへん
もしかしたらまたマジック様のところにでもおるんか?
あん2人がおらへんでもシンタローはんはいますやろ
ノックしようと手を掲げると中から聞き覚えのある声が何故か二つ
これは・・・シンタローはんとキンタローや
また遠征の相談でもしてはるんでっしゃろか・・・・
せやけど話している内容はなんやちごてる
「いいじゃん。こういう場所の方がオマエも燃えるだろ?」
「そうなのか?しかしシンタロー。アラシヤマは・・・」
「バーカ、んなの気にしてんのかよ。あいつはただのダッチだっつうの」
「しかしだな、お前は」
「キンタローが真剣に俺だけを見てくれるんなら、いつでも別れるぜ?」
「オレは・・・・その・・・・真剣なつもりだが」
「なら早くヤろうぜ?」
なにを?
誰と?
ゆっくりと視界が白くなっていく
これ夢なんかな?
それもめちゃめちゃ悪い夢
せやったら早う目覚まさへんと
悪夢を全部消してまえば、夢は終わる
大好きなシンタローはんの上にいた金髪に火を点す
あぁやっぱ夢やからなんやろか?
よぉ燃えてはる
しかし変な臭いや
どっかで嗅いだことある気するんやけど・・・・どこやったっけ?
あれ?
シンタローはんが凍り付いた顔でわてを見てはる
どないしたんやろ・・・・
せや!夢なんやからわてからキスしても恥ずかしくないはずや
いっつもされてばっかりやし
思いついて直ぐ行動に移す
シンタローはんの舌は熱かった
ふふ・・・夢ん中おるのになんで温度とか感じるん?
やっぱしいい夢なんかな
「シンタローはん・・・・」
「ア・・・・アラシヤマ!オマエなにやってんだ!?」
「どないしたん?怖い顔して・・・クスクス・・・そんなシンタローはんは嫌いどす」
部屋の温度は上がっていく
あぁ・・・シンタローはんが陽炎で揺らめいて見える
はよ消さな
そう思って静めようとしても、身体の内に点った火はどうやっても消えへん
部屋が炎に包まれて
全てが燃えていく
残るのはきっとわて一人
「大嫌い・・・なんて嘘。大好きどすえ、シンタローはん」
だからわてだけのモノ
よそ見している暇なんてあらへんやろ?
わてを嘘で捕らえて
嘘に飲み込まれてしまった
愚かで美しい
愛しの嘘つき
++++++++後書き++++++++
・・・・・嫌だ
自分で書いていてなんですが。。。。
アラシヤマは全てを燃やし尽くしました
思いも
喜びも
悲しみも
寂しさも
何も残りません