雪の華 
夜も更けた頃、ミヤギは早足で自宅に向かっていた
それは家でゆっくり休みたいという思いではなく、一刻も早く家に帰り自分を待 っている人に謝りたいという気持ちからだ
同じ仕事場だが同じ場所に派遣されることは少ない
2人そろっての休みはなかなか無いのでとても貴重
今日は珍しく2人とも1日休みだったがミヤギだけ急に任務が入り一緒に買い物に行く予定が潰れてしまった
できれば今日中に帰ってきてほしい
そう言って笑顔で自分を送り出してくれた恋人はなんだか寂しそうだった
家で待っていてくれる恋人トットリのためにもミヤギの足は自然と早くなっていたのだ
やっと家につきインターホンを押すとすぐに扉が開きトットリが出てきた
「今帰ったべ」
「ミヤギくんお帰りだっちゃ!」
「おめ!なんて格好してるだ!?」
「あ・・・これ?」
トットリはサンタ服を着ていた
それも女物でミニスカート
ミヤギは思わず鼻をおさえた
可愛い
童顔だからか、それともトットリに限ってなのか分からないがとてもよく似合っている
「んと、僕は嫌だって言ったっちゃよ?けどグンマにこれ着て出迎えれば絶対にミヤギくんが喜んでくれるって言われたわいや」
「オラのため?」
「うん。どげだ?ミヤギくん」
上目遣いで聞かれ鼻をおさえていたミヤギの手から血がこぼれ落ちる
すぐに抱きしめて褒めたかったがせっかく似合っている服が鮮血に染まってしまう
それはなんとしてでも避けなければならない
とにかくミヤギはトットリと家の中に入った
ようやく鼻血が止まった頃ミヤギはトットリに頭を下げる
「すまなかったべトットリ、今日一緒に買い物にいく約束しったっけのに」
「しょうがないちゃ、ミヤギくん仕事だったし」
「怒ってねのが?」
「怒るわけないっちゃ。ちゃんとクリスマスのうちに帰ってきてくれたわいや」
「あ・・・」
ミヤギは今日がクリスマスであることをすっかり忘れていた
そのことがトットリにも伝わったらしい
トットリはキッチンに行き用意してあったクリスマスケーキを手に取った
「ミヤギくんのだらずっ!!」
玄関に立ち尽くすミヤギに思いきりケーキを投げつけてトットリは寝室に駆け込んだ
そのケーキをまともに浴びたミヤギは慌てて追いかける
扉を何とか開けようとしたがトットリが押さえつけているらしく開かなかった
「悪かったべトットリ、待たせた上に忘れるなんてオラ最低なことしたべ」
だが返事は帰ってこない
途方に暮れたミヤギは、とりあえず床に落ちたケーキをかたづけ
生クリームがつきべたべたになってしまった髪をなんとかするため、洗面所に向かった
廊下からミヤギの気配が消えた頃トットリは音もなく寝室から出て小さく溜め息をついた
(絶対ミヤギくんに嫌われたっちゃ)
先ほどはあまりにもショックを受け思わずケーキを投げつけてしまったがミヤギは今まで仕事をしていたのだ
そのうえ早く帰ってきてほしいというわがまままでも聞いてくれた
まぁ、そのわがままは2人っきりで過ごす初めてのクリスマスを少しでも楽しみたかったからなので今や無意味になってしまったのだが・・・
とにかくシンタローに教わり作った料理をこのまま出しっぱなしにして捨ててしまうのももったいないので
電気をつけず暗闇の中トットリは料理を冷蔵庫にしまうべく部屋から出てきたのだった
キッチンのテーブルに並んでいた料理をあらかたしまい終わり部屋に戻ろうとしたとき
「トットリ・・・」
「ミ・・・ミヤギくん!?」
気を緩めていたときに後ろから不意に抱きしめられトットリは驚きの声を上げる
洗ったばかりの髪からはほのかにシャンプーの香りがしてトットリの心を落ち着けた
「さっきはちゃんと謝れなかったべ」
「・・・僕も謝るっちゃ、ミヤギくん」
「な・・・!?トットリは謝る必要ないべ!」
「僕、ミヤギくんの気持ち考えないで酷いこと言ったっちゃ」
トットリはミヤギと向かい合うとごめんねと謝る
その姿があまりにも可愛らしくてミヤギは思わず抱きしめた
「ミヤギくん?」
「・・・その格好でその謝り方は反則だべ」
トットリはしばらくきょとんとした後自分の服を見て頬を赤く染める
そういえばサンタ服を着ていたことを忘れていた
「トットリ」
ミヤギがトットリの頬に手を当てるといきなりケータイが音を立てる
ミヤギはポケットからケータイを取り出すと開いて耳に当て誰かと話始めた
「もしもし・・・なんだおめか、分かってるべ。ちゃんとすっから・・・あぁ」
「??」
トットリが見守る中ミヤギはバキンとケータイをたたむ
「誰?」
「トットリ、明日2人で出かけるべ」
「え・・・でも」
明日はミヤギもトットリも任務で出かけられないはずだが
「シンタローに無理言って休みもらったべ。んだがら明日は2人っきりでクリスマスやり直すべ」
「ミヤギくんっ」
ミヤギの優しさにトットリは思わず涙ぐむ
本当に嬉しかった
「メリークリスマス、トットリ」
「メリークリスマス、ミヤギくん」
ミヤギはそっとトットリに口付ける
いつの間にか日付は変わっていて外では雪が降り始めていた
今からでも遅くはない
2人だけで最高の
クリスマスを
++++++++後書き++++++++
夏目さんとマチに献上した、というより押しつけた初ミヤトリSS
初めてなので言葉遣いが分からず苦労しましたがかなり楽しかったですv
2人のベストフレンドを超えたベストカップルを目指しました
上手く表現出来なかったのでちょっと後悔
ミヤトリもっと練習します
