アングレカム〜いつまでもあなたと一緒〜
静寂で満たされた殺風景な部屋
そこには必要最低限の家具しか置かれていないが、その一つ一つに暖かみがあり一目見れば高級だと分かる代物ばかり
それもそのはず
ここはある国の有名ホテルの一室
深夜にもかかわらず明かりが点されていないせいで、闇が集まり、滞り、濃縮されている
そんな闇に紛れるように、トットリはひっそりと存在していた
宿泊目的ではないため怪しまれないように小さなトランクを一つ持っているだけ
もちろん中身も空だ
息を潜め、気配を殺し、闇と一体になる
着ている服も濃紺の忍び服のため、同じ職種の者以外誰一人として彼を見つけることなど出来ないだろう
今回の任務は、このホテルに滞在中のL国幹部の男を暗殺すること
もちろん寝込みを襲ってしまうのが手っ取り早くて容易い
だが方法はあくまでも暗殺
SPに気づかれてしまえば失敗となり自分が消される
男の趣味趣向を熟知し、そこにつけ込み一撃で仕留める必要があった
だから今こうして身も心も闇に染めている
全て染まりきってしまえば何だって出来るし、どんなことでも耐えられた
その度に何かが崩れ落ちてゆく
闇に食われて戻らなくなってしまったココロは他の何かで継ぎ足さなければ壊れてし まう
でもやめるわけにはいかなかった
これが仕事で、生きる術で、自分で決めたことだから
「っ!?」
無音だった部屋に突然ケータイのバイブ音が響く
今日に限って電源を切るのを忘れていたらしい
こんな失態は初めてのこと
やはり疲れているのだろうか?
帰還した後休暇を取るべきか真剣に悩みつつ弱々しい光を放つディスプレイを見ると
着信 ミヤギ
とたん悩んでいたことが吹き飛んだ
何があったのだろう
ミヤギも確か別任務のはず
トットリは着信をとるべきか逡巡した
任務中、特に今回のような任務では失敗したとき身元が明かされるのを防ぐため、終了まで外部との連絡を一切断ち切らなければならない
分かっている
だけどミヤギが任務中に電話をかけてくるなんてよっぽどのことだ
ミヤギは大切な大好きな人
なにかあったら一生後悔するだけではすまない
声を聞くだけ
何があったかを聞いたらすぐに切ろうと誓いトットリは通話ボタンを押した
「も・・・もしもし」
『トットリが?』
「そげだ・・・どげんかしたんだぁらか?ミヤギくん」
『おら今日帰れそうにねっけがら、どうしても伝えときたいごどあってよ』
『誕生日おめでとう』
「・・・え?」
『え?じゃねーべ?もすかすて、自分の誕生日忘れてたなんて寂しいとごどいわねよな』
「ぁ・・・ありがと!」
『よす!おらが帰ったら誕生会でもすっぺ。頑張ってすぐ終わらすがら楽しみにしとげ!!じゃな』
プツリと切れた通話と共に乾いた笑いが零れ落ちる
クスクスとしばらく止めることができなかった
「ぼかぁ・・・今から人を殺すっちゃよ?・・・これからもずっと殺していく・・・・なのに・・・こんなことしかできない僕が生まれた日を一緒に祝ってくれるんだぁらか?」
悲哀を含んだ呟きはまた闇へと飲み込まれ消えてゆく
ずっと一緒にいたい
僕が生きていくために
僕が僕であるために
その夜、この世からまた男が一人姿を消した
犯人は見つからない
++++++++後書き++++++++
はっぴーばーすでいトットリ!
ベスフレ背景色が同じでちょっと後悔
どんどん暗くなっていくベスフレに比例しどんどん明るい恋をしていく心友
原作とはまるで逆ですねww
南国時代パプワ島に行く前のお話になります
トットリには恋愛感情としての好き
ミヤギには友達としての好き
だったと思います
ちなみに題名は花の名前です
もちろん12日の誕生花ではありませんww